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「横歩取り」の狙いと対策、序盤の駆け引きを初心者向けに解説

 
「横歩取り」の狙いと対策
この記事を書いている人 - WRITER -
梅澤 浩太郎
将棋講師。棋力はアマ四段。 インターネット上で将棋を教われるサイト、将棋マッチを開設・運営しています。 1987年12月生まれ。群馬県在住。 このブログでは自分でイラストを描きつつ情報発信中。叡王戦を支援しています。 将棋を始めたころからずっと、一番好きな棋士は藤井猛九段。 海外旅行が好きで旅行記も書いています。

「横歩取り」の狙いと対策

「横歩取り」という将棋の戦法。

プロの将棋を観戦していると
ときどき登場しますが、
棋士はどんなことを考えて
この戦法を指しているのでしょうか。

横歩取りには
どんな狙いがあり、
どういった対策があるのか。

また、序盤にどんな駆け引きが
されているのか。

これらを初心者向けに
わかりやすく解説します。

後手の「横歩取らせ」戦法

横歩取りは
角交換や飛車交換になりやすく、
とても激しい戦法です。

あっという間に
決着がつく場合も多くて、
事前の研究がものを言います

そして、横歩取りという戦法の
大きなポイントは、
後手が誘導する戦法
だということ。

後手の方から
戦法を選ぶというのは、
お互いに居飛車の将棋である
「相居飛車」では
珍しいことです。

 

相居飛車の他の主要な戦法、
矢倉、角換わり、相掛かりは、
いずれも先手から誘導します。

先手がそれらの戦法を指そうとして、
後手が応じれば
それぞれの戦法が実現するわけです。

ところが、
後手が横歩取りに持ち込もうとすると、
先手は矢倉も角換わりも
指せなくなってしまいます。

そのため横歩取りには、
自分のペースに引きずり込む力
があると言えるのです。

 

「横歩取り」という
名前の理由を考えてみます。

居飛車で飛車先の歩を
どんどん伸ばしていき、
歩を交換しながら
飛車が前に出る。

その前に出た飛車の
「横」にある「歩」「取る」ので
「横歩取り」と呼ぶわけです。

横歩を取るのは先手ですが、
「私の横歩を取ってもいいですよ」
という局面に誘導したのは
後手の方だというのがポイントです。

後手が「横歩を取らせた」のです。

その意味では、
「横歩取り」という戦型は
「横歩取らせ」と呼んだ方が
わかりやすいかもしれません。

先手は横歩取りを回避できる

後手が「横歩を取らせ」
ようとしてきたとき、
先手としては
その誘いに乗らない
という手もあります。

横歩を取らずに、
おとなしく飛車を
まっすぐ引いておく
指し方もあるのです。

けれども、
プロの実戦では
横歩を取る場合の方が
圧倒的に多いです。

 

なにしろ
歩を取れば「駒得」になります。

先手番ならではの
有利さを追求するなら、
横歩を取った方がいいという
考えなのでしょう。

歩を一枚得するということは、
先手と後手で歩が
「9枚vs9枚」の互角の戦力だったものが、
「10枚vs8枚」になるということなので、
その影響はけっこう大きい。

この「駒得」が大きいからこそ、
先手は横歩を取って、
後手の誘いに乗ることが
多いのです。

後手としては、
この損のぶんを他の面で
取り返さなければいけません。

後手が横歩取りを指す狙い

では、歩を損してまで
「横歩取り」の戦型に持ち込んだ
後手の狙いは何なのでしょうか。

一番の狙いは
「主導権をにぎる」
ということです。

 

横歩取り以外の
相居飛車の戦型では、
先手の方が一手先に指せるので、
先手が攻めて後手が受ける
という展開になりがちです。

ただし「横歩取り」の場合には、
先手は横歩を取った後に
飛車の位置を立て直す
必要があるため、
むしろ後手の方が
先に攻めの形が作れます。

そのため、他の戦型とは違って
後手から積極的に攻めていけます

これが「横歩取り」を指すときの
一番のメリットです。

先手の3つの有力な対抗策

主導権をにぎろうとする後手に対して、
先手の側には
有力な対策が大きく3つあります。

 

そのうち2つは、
ここ数年に現れた作戦。

まずは「青野流」という作戦。

青野照市九段が指し始めたことから、
この名前で呼ばれています。

また、佐々木勇気六段が
勝ちまくって注目された
「勇気流」という作戦もあります。

 

この2つの対抗策の
考え方は共通していて、
それは
「飛車の位置を立て直さない」
ということです。

横歩を取った後に
飛車の位置を立て直していると、
後手に主導権を握られてしまう。

それであれば、
飛車は横歩を取った位置のまま
動かさずに
そのままガンガン攻めよう
という作戦なのです。

実際、「青野流」と「勇気流」では
先手の勝率が高く、
後手は苦しめられています。

また、「青野流」の作戦は
将棋ソフトが採用することも知られており、
そのことからも優秀な作戦であることが
うかがえます。

参考記事はこちらです↓

 

もうひとつの先手の対策は
「▲3六飛」と飛車を引いて
立て直す作戦。

「青野流」と「勇気流」が
登場する前には、
先手にはこの作戦しか
ありませんでした。

そのため、一言で
「▲3六飛」と分類しても、
さらにその中には
これまでの歴史で積み上げられてきた
数多くの作戦
があります。

「▲3六飛」は
今でも有力な先手の対策です。

 

このように、
後手が「横歩取り」の戦型を
選んできたときには、
先手には「青野流」、「勇気流」、「▲3六飛」
という大きく3つの作戦があります。

そして、このうちのどれを選ぶかは
先手が自由に決められます

これが先手の大きな利点です。

 

後手としては、
先手がどの作戦を選ぶのかは
事前にはわかりません。

そのため、
先手がどの作戦できたとしても
五角以上に戦えるように、
3つの対策すべてに対して
研究して準備をしておく
必要があります。

最有力である
「青野流」に対抗するだけでも
大変だというのに、
「勇気流」と「▲3六飛」の準備も
万全にしないといけない。

 

これが大変なため、
プロの実戦では
後手が「横歩取り」に誘導することが
少なくなっている
のです。

名人戦と叡王戦で横歩取りが登場

横歩取りの将棋が
少なくなっている状況の中、
直近のタイトル戦で
連続して「横歩取り」が登場しました。

ここ数年はなかったことです。

 

まずは4月11日の朝から指された
名人戦第1局の千日手指し直し局。

後手番となった佐藤天彦名人
「横歩取り」に誘導しました。

対する先手の豊島将之二冠は
「青野流」で対抗して、
結果は豊島二冠が勝利。

この対局について詳しくはこちらをどうぞ↓

 

そして、そのわずか2日後、
4月13日には叡王戦第2局
後手番の永瀬拓矢七段
「横歩取り」に誘導。

先手の高見泰地叡王は
「▲3六飛」とする作戦で応じ、
永瀬七段が勝利しました。

この対局について詳しくはこちらをどうぞ↓

 

特に永瀬七段は
3月22日の王位リーグの対局でも
後手番で「横歩取り」を指して勝利。

しかもその相手は強敵の
羽生善治九段です。

居飛車党の棋士にとって
不利な後手番のときに
どんな作戦で指すのかというのは
共通した課題ですが、
永瀬七段は「横歩取り」を
大きな武器にしている
様子。

 

もしかしたらプロの最先端の研究では
「横歩取りの後手番は有望」
という認識が出てきたのかもしれません。

今後は「横歩取り」の戦型が
増えていくことになるのか、
注目しています。

まとめ

「横歩取り」は
後手から誘導する戦法で、
後手番ながら主導権を握るという
狙いがあります。

対する先手の対策は
「青野流」、「勇気流」、「▲3六飛」
と3つもあり、
後手はそのすべてに
対応しなければいけないのが大変で、
ここ数年は横歩取りの将棋は
減ってきています。

ただそんな中で、
名人戦と叡王戦で連続して
横歩取りが指されたのは、
大きなインパクトがありました。

 

このような横歩取りの知識があると、
対局中に棋士が考えていることが
想像できます。

そうすると将棋観戦が
もっと楽しくなるかもしれません。

そんな効果を期待しています。

 

 

将棋の戦法については
こちらの記事も合わせてどうぞ↓

 

 

 

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