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「リボーンの棋士」第4巻の感想~アマ竜皇戦決勝の2つのテーマ~

 
「リボーンの棋士」第4巻の感想
この記事を書いている人 - WRITER -
梅澤 浩太郎
将棋講師。棋力はアマ四段。 インターネット上で将棋を教われるサイト、将棋マッチを開設・運営しています。 1987年12月生まれ。群馬県在住。 このブログでは自分でイラストを描きつつ情報発信中。叡王戦を支援しています。 将棋を始めたころからずっと、一番好きな棋士は藤井猛九段。 海外旅行が好きで旅行記も書いています。

「リボーンの棋士」第4巻の感想

「リボーンの棋士」の第4巻が
8月30日に発売されました。

私もさっそく購入して読んだところ、
とても面白かったです。

アマ竜皇戦決勝の将棋だけで
一冊をほぼまるごと使うとは
予想しておらず、
驚きました。

本巻を読んでの感想をまとめましたが、
ネタバレがあるので注意してください。

ちなみに冒頭のイラストは
マンガ内の印象的なコマをお手本に
自分で描きました。

「リボーンの棋士」の感想は
他にも書いているので、
合わせてどうぞ↓

一局の将棋に費やされた第4巻

今回発売された第4巻はこちら↓

 

本巻で描かれたのは
アマチュア竜皇戦の決勝戦

第1巻で地区予選が始まってから
ずっと物語の中心にあった
アマチュア竜皇戦ですが、
それがいよいよ決着です。

ということで
とても重要な一局ではあるのですが、
単行本一冊を
この将棋のために使うとは。

物語としてまだまだ先は長く
描きたい内容は多いと想像される中、
ぜいたくなページ数の使い方です。

そのぶん序盤、中盤、終盤と
将棋の展開が局面を見ながら追えるので、
自分で将棋を指す私のような読者には
とてもありがたかったです。

 

ちなみに第4巻の表紙の人物は
いったい誰なのでしょうか。

本編中にこんな外見の人物がいたか、
心当たりがありません。

第1巻、第2巻、第3巻がすべて
主人公の安住だったことを考えると
第4巻も同じと考えるのが自然なのですが。

服装も髪型も安住とは思えないので、
誰なのか不明です。

川井正和との決勝戦

本巻の主人公とも言えるのは
第3巻から登場した
川井正和(かわいまさかず)。

大会に出場するのは初めてだという
中学生です。

決勝の対局は
物語全体の主人公である安住ではなく、
川井の視点からの描写が多いです。

あまりに川井を中心に話が進むので
最初に読んだときは
不思議な感じがしたのですが、
改めて考えてみると
その理由がわかりました。

決勝戦の対局の重要度
安住と川井では違うのです。

 

川井がアマ竜皇戦で実現したいのは
「奨励会三段リーグへの編入」
です。

そして、編入のためには
アマ竜皇戦で優勝する必要があります。

準優勝ではダメです。

だから、川井にとって決勝戦は
「どうしても勝ちたい一局」
だったわけです。

 

一方の安住の場合。

安住がアマ竜皇戦で得たいのは
「プロ棋戦への参加資格」
です。

そして、そのために必要な条件は
ベスト4に入ること。

条件の達成のために
安住にとって重要な一戦は、
ベスト4をかけて戦った
土屋との対局でした。

そこを突破した後の決勝戦の時点では、
安住はすでに目的を果たしているのです。

 

その意味で、
決勝の対局は安住にとって
「消化試合」と言えなくもありません。

このため、
もし主人公の安住を中心に
決勝戦を描こうとすると、
勝負の盛り上がりが
欠けてしまう恐れがあります。

それを避けるためにも、
川井という新しいキャラクターが
第3巻から投入されたのでしょう。

決勝戦に込められたテーマ

ただ、さらに考えを深めてみると、
そもそもこの決勝戦は
1巻をまるごと使ってまで
盛り上げる必要はあったのか
という気もします。

「リボーンの棋士」の物語の骨格は、
「安住がプロを目指す」
ということです。

その視点から見ると、
アマ竜皇戦の決勝は
オマケでしかありません。

マンガとして描くうえでは
決勝は順当に
安住とアマ三冠の桐山の対局にして、
少ないページ数で
終わらせる手もあったはずです。

 

ですがあえてそうはせず、
川井というキャラクターを
深堀りしたからには、
著者が決勝戦で描きたかったテーマ
があるのでしょう。

著者の気持ちを想像して、
そのテーマを2つ挙げてみます。

テーマ①プロを目指す少年と親との関係

著者が伝えたかったであろう
テーマの1つ目は
「プロを目指す少年と親との関係」
です。

将棋のプロというものに
感心のない親に、
プロを目指したい自分の気持ちを
どう伝えて理解してもらうか。

実はこの「親との関係」については
第1巻の片桐の登場時にも
すでに取り上げられています。

片桐の場合は
父親に自分の気持ちを率直に伝えたものの
理解してもらえず

奨励会に入ることができませんでした。

そして、
父親に説得されてあきらめてしまった過去が
現在でも片桐を苦しめています。

 

一方、川井の場合には片桐とは異なり、
「プロを目指したい」という
自分の気持ちを自分で認めることができていない
状態です。

そのため「親との関係」では
親が自分の希望を認めてくれるのか
という段階までも達していません。

川井は最初は親に
将棋の話を一切しないことで
「自分の気持をどう伝えて理解してもらうか」
という問題に折り合いをつけようと
していましたが、
父親に大会出場のことがバレて
状況は一変。

プロを目指すことについて、
自分の気持ちにも
父親への説明にも
正面から向き合わざるを
えなくなりました

 

第1巻だけでなく本巻で改めて
「親との関係」の問題を
詳しく描いたということは、
著者はまだ描きたりない部分が
あったということ。

本巻の川井のエピソードを通して、
プロを目指す少年と親との関係は
「親が認めるか否かだけではない」
というメッセージを
伝えたかったのかなと
私は考えています。

テーマ②人とリアルで対局せずに強くなった子ども

テーマのもうひとつは、
「人とリアルで対局せずに強くなった子ども」
です。

川井はスマホの対戦アプリや
将棋ソフトだけで
強くなったという人物です。

安住や観戦していたプロ棋士とは
まったく違う感覚を持ち、
彼らが思いつかないような手を指して
戸惑わせながら、
途中まで優位に勝負を進めました。

人とろくに対局したことのない子どもが、
知識や経験ではるかに上回る大人を
ほんろうして勝ってしまう。

こうしたテーマはとても刺激的で、
著者は作品中で
取り上げたくなったのでしょう。

 

そうした川井の将棋を見た私の感想は、
こういうキャラクターは見たことあるな
というものでした。

一見すると、
川井が強くなるのが可能となったのは
今の時代だからこそのように見えます。

今は将棋ソフトがプロ棋士より強くなり、
スマホアプリで簡単に
対局できるようになりましたから。

ですが実際には、
過去の将棋マンガにも
そうしたキャラクターは
ときどき登場
しています。

私の頭にまっさきに浮かんだのは
「しおんの王」という将棋マンガの
本間素生(ほんますお)という人物です。

「しおんの王」はこちら↓

 

本間くんは小学5年生。

人との対局は初めてで
いきなりプロ棋士と対戦。

ネットで流行しているけれど
プロ棋士の感覚とは違う作戦を指して、
プロに勝ってしまうのです。

このマンガが連載されていたのは
2004年から2008年なので10年以上も前

まだ将棋ソフトはまだ弱く
スマホも普及していない時期ですが、
本間くんはパソコンのネット対局だけで
強くなったという設定でした。

 

このような
「人とリアルで対局せずに強くなった子ども」
というのは取り上げたくなる
テーマなのでしょう。

10年以上前から
このテーマを知っている私にとっては
本巻の川井のような少年の存在は
それほど違和感がありませんが。

世間一般の感覚からすれば
「初めて大会に出場して
大人を次々と負かす子ども」

がいることは驚くべきことで、
将棋マンガで扱うには
ちょうどよい題材なのでしょうね。

 

私の頭に浮かんだことをもうひとつ。

2019年4月29日に行われた
「棋才 平成の歩」
というイベントに出演した藤井聡太七段。

令和の時代に予想される
将棋界のビッグニュースは何か
という質問に対してこう答えました。

「人間と一度も対局せずに棋士になる方が
出てくるのではないかと思います」

まさに本巻の川井のような存在を
藤井七段も予想しているようです。

 

藤井七段のこの回答は
こちらのページに載っています↓

まとめ

「リボーンの棋士」は
第4巻もとても面白かったです。

アマ竜皇戦の決勝だけで
一冊を費やしたのは意外でしたが、
この対局には
①プロを目指す少年と親との関係
②人とリアルで対局せずに強くなった子ども
という2つのテーマが込められていたと
私は感じました。

どちらも将棋界をよく知らない人には新鮮、
そして知っている人には納得のいく
深いテーマだと思います。

次巻から物語は新章に突入するようなので、
そちらも楽しみです。

 

 

「リボーンの棋士」については
こちらの記事もどうぞ↓

 

 

「リボーンの棋士」をまだ
読んだことのない人は、
ぜひ第1巻からどうぞ↓

 

 

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梅澤 浩太郎
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