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「永世乙女の戦い方」3巻の感想~「世界の再発見」というテーマ~

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「永世乙女の戦い方」3巻の感想

「永世乙女の戦い方」の
3巻が発売されました。

私もさっそく買って読んで、
すごくおもしろかったです。

いままで謎に包まれていた
天野香織の本性や過去が
だんだんと明らかになってきて、
話が盛り上がってきました。

 

3巻まで読んで、
「永世乙女の戦い方」
という作品のテーマが
ようやく見えてきた気がします。

そのテーマとは、
「香による世界の再発見」
です。

どういうことなのか、
感想と考察を書いていきます。

ネタバレがあるので
注意してください。

 

冒頭のイラストは
マンガをお手本にして
自分で描きました。

対局中の迫力が表現できたので
大満足です。

 

「永世乙女の戦い方」の他の巻の感想も
合わせてどうぞ↓

目次

「永世乙女の戦い方」の第3巻

「永世乙女の戦い方」の
第3巻はこちらです↓

 

表紙の香織さんが美しいですね。

3巻では2つの対局が描かれました。

銀河戦で
香織さんが香の師匠の四条九段に
勝つ対局と、
マイナビ女子オープン本戦で
香が姉弟子の亜久原初音に
勝つ対局です。

香はいまの香織さんを見ていない

第3巻を読んでいて
いちばん驚いたのが、
「香は香織さんのことを何も知らない」
ということ。

香には香織さんしか見えていない、
ということが
これまでずっと描写されてきました。

それなのに、
3巻では香が香織さんの対局姿を
これまでほとんど見ていなかったことが
明らかになったのです。

それって、
すごくヘンなことだと思いました。

 

香織さんは
現在女流七冠ですから、
一年中タイトル戦を指しています。

銀河戦のような
テレビ棋戦にも出ています。

そうした対局の
映像なり写真なりを見る機会は多そうなのに、
香はそれを見ていなかった

香は女流棋士なのですから、
香織さんのタイトル戦を
現地に観戦に行くことだって、
やろうと思えば
いくらでもできたはず。

それをしていなかったというのは、
すごく意外です。

 

なんなら、
香織さんの写っている
入手可能な映像や写真は
すべてチェックしている、
ぐらいのことをやっていても
ぜんぜんおかしくないのに。

香は香織さんにしか興味がないのだから
香織さんのことは徹底的に
追いかけているのかと思いきや、
ぜんぜんそんなことはなかった
ようです。

 

まあでも、
香の部屋の天井に
香織さんの写真が
バンバン貼られているのには
笑ってしまいましたが。

普通の部屋だと思ったら、
天井はあんなことに
なっていたんですね・・・。

香が見ているのは過去の香織さん

香織さんすら見ていないとしたら、
いったい香は何を見ているのか。

それは
過去の香織さん
なんですよね。

小学生のときに、
「すぐにつかまえる」
と約束した
出会ったころの高校生の香織さんです。

 

香にとっては、
香織さんと自分以外の人との
対局をいくら見ても
「つかまえる」ことには
結びつきません。

だから、いまの香織さんの対局にすら
あんまり興味がないのでしょう。

 

いろんな人から
「おかしい」
「気持ち悪い」
と言われている香ですが、
読者の視点から見ても
やっぱり異常ですよね。

香織さんしか見えていないのならまだしも、
その香織さんのいまの姿すら
見えていないのですから。

「香による世界の再発見」

「永世乙女の戦い方」という作品の
テーマは何なのか、
ということを私は探していました。

3巻を読んで、
よくやくテーマが見えてきた気がします。

 

まず一般論として、
将棋マンガでよくあるテーマは
「主人公の成長」
です。

成長というのは
もちろん人間的にも成長するのですが、
「将棋が強くなる」
というのがイチバン。

将棋が弱かった少年がプロになったり、
ライバルを倒してなにかで優勝したり、
悪いヤツをやっつけたり、
将棋が強くなって勝つことで
そういった何らかの成果を得るわけです。

 

ただ、「永世乙女の戦い方」の場合は、
そういったわかりやすいテーマではない
ように思えていました。

香は将棋が強くなることとか、
勝つこととかにこだわりがない

んですよね。

香織さんに勝つのが目標だ
というのはいちおうあっても、
それはテーマではないだろうと。

香がパワーアップして
香織さんを倒すという、
そういう話を
作者のくずしろさんは描きたいわけでは
ないだろうと。

 

 

では何を描きたいのか、
それが今までよくわからなかったのですが、
ようやく見えてきました。

それが
「香による世界の再発見」
です。

 

まず前提として、
香は何にも見えていません

他の女流棋士のことも、
師匠のことも、
アナスタシアのことも、
眼中にありませんでした。

そして、
さきほど書いたとおり、
いまの香織さんすら見えていない。

 

香の小学生のときの様子を見ると、
まわりの世界に
興味がなかったというのは
昔からそうだったのだとわかります。

例えるならば、
生まれたての赤ん坊が
箱の中に閉じ込められたまま
大きくなったようなものです。

自分のまわりには
世界があって人がいるのに、
興味がなくて見えていないから
存在しないのも同然

でした。

 

それが、
閉じ込められたいた箱に
少しずつ穴が空くようにして、
外の世界が見えてくる。

あったのに見えていなかったものを
「再発見」する。

それが
「永世乙女の戦い方」
という物語なのだろうと
私は考えています。

ここで、
箱に穴をあけるための道具にあたるのが
将棋です。

 

 

香が塔子さんから

「早乙女ちゃん気持ち悪い。
なんのために
将棋をやっているのか
わかんない。」

とキツイ言葉を言われるシーンが
ありました。

 

この塔子さんの問いに、
「自分の周りの世界を見るために
私は将棋をやっている」

と香が自信を持って
答えられるようになる。

それまでの過程を描くのが、
この作品のテーマなのではと
私は考えたのです。

天野香織との関係がカギ

こういうふうに
テーマを設定してみると、
やっぱり香にとって
避けては通れないのが
天野香織です。

 

昔の香は、
友達と遊んだりしなくて
自分の中に閉じこもりがちでした。

あえて式っぽくにするとこうです↓

昔の香=世界が見えない

 

そんな香は、
世界を広げてくれる
将棋と出会いました。

ただし、
将棋との出会いは
香織さんとの出会いとセット

です。

この出会いによって、
香には
「女流棋士になって
香織さんをつかまえる」
という目標ができました。

それによって
香の世界が広がればよかったのですが、
今度は香織さんしか
見えなくなってしまって、
あいかわらず世界は見えないままに↓

昔の香+将棋+香織さん=世界が見えない

 

 

そんな香に、
3巻の阿久原初音との対局で
変化がありました。

香は将棋を通じて
対戦相手のこと、
つまり世界の一部が
見えるようになったのです。

このあとのストーリーでも、
香は将棋を通して
世界の再発見をつづけていくでしょう。

 

で、
どうして初音ちゃんとの対局で
世界を広げられたかというと、
それは一時的にでも
香織さんのことを忘れて
初音ちゃんのことを考えたからです。

つまり、
世界の再発見をするには、
香織さんはジャマ。

香織さんの存在感が強すぎて、
彼女しか見えなくなってしまう
(しかも香織さんすら見えていない)
からです。

 

いまのところ、
香にとって将棋と香織さんは
切り離して考えることはできません。

でも、将棋を指しつつも
香織さんのことを忘れられたとき、
香は世界が見えるようになります。

式にするとこうです↓

(昔の香+将棋+香織さん)-香織さん=世界が見える

 

 

香にとっては、
香織さんは将棋と出会わせてくれた
という意味ではありがたい存在ですが、
彼女にとらわれていては
世界は見えないまま

香織さんは
乗り越えなければいけない壁です。

 

香はこの壁をどう乗り越えて、
世界の再発見にいたるのか。

それは単純に将棋で勝って
「女王」のタイトルを奪えばいい、
という話では済まないはず。

私はそんな視点で、
「永世乙女の戦い方」を
読んでいくつもりです。

くずしろさんのインスタグラム

おまけの話。

くずしろさんは
インスタグラムをやっているのですが、
ご存じでしょうか?↓

 

私は6月に知って以来、
インスタをチェックしているのですが、
内容にびっくり。

天野香織×角館塔子の
百合ストーリー

が展開しているのです。

まるで同人誌のようなお話。

ほぼ毎日更新されており、
少しずつストーリーが
進んでいます。

 

もはやスピンオフのマンガとして
単行本が出せるのではと思うほど
ネタが満載。

香織さんも塔子さんも
かわいいので、
私は楽しく見ています。

 

私はくずしろさんのマンガを読むのは
「永世乙女の戦い方」が
初めてなのですが、
もともと百合のジャンルが得意な
漫画家さんなんですね。

インスタでの話を読んでいても、
くずしろさんは本当は
こういう話も描きたいんだな

というのが伝わってきます。

そちらを読んでいると、
本編の香織さんと塔子さんを
見る目も変わってきます。

本編ではお二人の関係について
あまり説明がないので、
それを補うという意味でも
インスタでの話はありがたいです。

 

香織さんと塔子さんの
漫才のような掛け合いは
3巻のカバー裏の
詰将棋コーナーにも進出。

お二人の会話は好きなので、
楽しませていただきました。

まとめ

・「永世乙女の戦い方」の3巻を読んだ
・いままでわからなかった作品のテーマが見えてきた
・テーマは「香による世界の再発見」ではないか
・香は将棋を通して自分のまわりの世界が見えるようになる
・ただし、香織さんという壁を乗り越えないといけない

 

4巻以降、
マイナビ女子オープンの本戦で
どんな戦いが展開されるのか、
楽しみですね。

これは私の予想ですが、
香は準決勝でアナスタシアに勝ち、
決勝で塔子さんvs須賀田空の勝者と
戦うことになるのでしょう。

その過程で香がどのように
「世界の再発見」をするのか、
注目していきます。

 

 

「永世乙女の戦い方」の他の巻の感想も
合わせてどうぞ↓

 

他の将棋マンガの感想も
書いています↓

 

 

 

「永世乙女の戦い方」3巻の感想

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