将棋の順位戦の仕組みを
わかりやすくまとめました。
順位戦はその名の通り
「順位」が大事な棋戦なので、
その仕組みがわかっていると
観戦がより面白くなります。
順位戦の見どころを4つ挙げると、
①挑戦と昇級、②降級、③順位争い、
④順位によるドラマ、です。
それぞれについて
詳しくお伝えします。
順位戦の仕組み
順位戦は大部分の棋士が
参加する棋戦です。
八大タイトルのひとつである
「名人」への挑戦者を決める
というのが、
順位戦の一番の目的。
棋士たちは
5つのクラスに分かれて
1年をかけてリーグ戦を戦います。
そして、
その成績に応じて
上のクラスに昇級したり、
下のクラスに
降級したりします。
プロデビューした棋士は
まずは一番下のクラスである
C級2組に所属。
そこから昇級を繰り返していき、
一番上のクラスである
A級で優勝すると
「名人」に挑戦できるのです。
順位戦は「名人」を頂点とした
ピラミッドの図で表せます。
下のクラスにいくほど、
人数が多い構造。
上のクラスに属していれば
他の棋戦で
予選が免除になったりもするため、
どのクラスにいるかは
棋士にとって重要です。
見どころ①「名人」への挑戦と昇級
順位戦を観戦するときの
一番の見どころは、
なんといっても
「名人」への挑戦者が
誰になるのかということ。
タイトル挑戦者は
A級の棋士だけで争われ、
他のクラスの棋士には
挑戦者になる可能性は
ありません。
他のタイトル戦であれば、
その年に勝ちまくれば
どの棋士にも
挑戦者になれる可能性があります。
一方、順位戦では
ある年にだけいくら勝っても
挑戦者にはなれないのです。
この点が、
名人への挑戦者を決める
順位戦ならではの特徴
と言えます。
A級以外のクラスでは
挑戦者争いはありませんが、
その代わりに盛り上がるのが
「昇級争い」です。
各クラスの成績上位者は
昇級となり、
翌年はひとつ上のクラスで
戦うことになります。
その数少ない昇級者になろうと、
激しい競争が起きるのです。
毎年の昇級する人数は、
クラスごとに
以下のように決まっています。
- A級:1名が名人に挑戦
- B級1組:2名
- B級2組:3名
- C級1組:3名
- C級2組:3名
順位戦の昇級は
棋士にとって
大きな意味のあることです。
名人へのタイトル挑戦に近づく
ことになりますし、
順位戦のクラスは
棋士としての「格」を
表します。
また、順位戦のクラスが上がると
「昇段」することもあります。
順位戦のクラスと段位は
以下のように決まっています。
- A級に昇級:八段
- B級1組に昇級:七段
- B級2組に昇級:六段
- C級1組に昇級:五段
ただ、段位は順位戦の
クラスだけで
決まるわけではないため、
上のクラスに昇級しても
段位は上がらない
という場合も多いです。
たとえば藤井聡太四段は
C級1組に昇級したときに
「五段」となりました。
しかし、C級1組にいる間に
順位戦以外の規定で
「七段」まで昇段したため、
次のB級2組に昇級したときには
段位は変わらなかったのです。
将棋の段位については
こちらの記事に
詳しく書いています。
見どころ②下のクラスへの降級
順位戦では
勝っている棋士だけでなく、
負けている棋士にも
注目が集まります。
誰が「降級」するのかも
大きな見どころだからです。
A級とB級1組では
成績が悪い2名が降級
となるので、
わかりやすいです。
少しわかりにくいのが
B級2組、C級1組、C級2組です。
これらのクラスでは
「降級点」を誰が取るか
という争いになります。
成績が悪い棋士には
降級点が付けられます。
降級点が付くと
それは翌年以降に持ち越されて、
B級2組とC級1組では2つ、
C級2組では3つたまると
降級となります。
降級点が付けられる棋士の数は
そのクラスの人数によって
決まっており、
その中でどの棋士も
降級点を避けようと必死です。
観戦するときの
ポイントとしては、
降級点を取って
降級する棋士としない棋士がいる
ということ。
すでに降級点を持っていて
次にまた取ると降級となる場合には、
降級点を取ることには
ものすごい重みがあります。
一方で、
すぐに降級にならない場合には
翌年も同じクラスで指せますし、
勝ち越すなどの条件を満たせば
取ってしまった降級点を
消すこともできます。
すぐに降級するかどうかによって、
気持ちが
かなり変わってくるのです。
ベテラン棋士が
いったん降級してしまえば、
今のクラスに戻ってくるのは
かなり厳しいです。
どのクラスでも、
勢いのある若手が
昇級を目指して
常に激しい競争を
しています。
それを押しのけて
ベテラン棋士が昇級するのは、
不可能ではありませんが
ものすごく大変なのです。
だから、
ベテラン棋士は
なんとか降級は避けようと
必死になります。
降級点が付きそうな棋士の中で、
どの棋士に降級点が付くと
降級となってしまうのか。
これを事前に知っておけば、
その棋士の必死さを
観戦者も感じることができます。
また、
C級2組から降級する場合は
特別な意味があります。
翌年は「フリークラス」となり、
順位戦に参加することが
できなくなってしまうのです。
さらに、
60歳以上の棋士であれば
フリークラスに落ちたら
引退となってしまいますし、
そうでなくても
10年以内に規定の成績を挙げて
C級2組に
戻ってこられなければ引退。
C級2組で降級点を
2つ抱えている棋士は、
かなりギリギリの状況に
置かれていると言えます。
降級点については
こちらの記事で
詳しく解説しています。
見どころ③順位の争い
順位戦に参加している
全ての棋士には
その名の通り「順位」が
付きます。
この順位は、
その年のリーグ戦の
成績によって
翌年の順位が決まる
という仕組みです。
つまり、たくさん勝てば
翌年は良い順位になり、
負けが多いと
翌年は悪い順位に
なるわけです。
例えばA級で
9勝0敗が1人、8勝1敗が1人、
7勝2敗が1人という
結果になったのであれば、
来年の順位は
9勝0敗が1位、8勝1敗が2位、
7勝2敗が3位
となります。
ここまでは
わかりやすいのですが、
問題は勝敗数が
同じになった場合です。
その場合は、
現在の順位の高い方が
来年の順位も上になります。
このように、
「順位」が大事なのが
順位戦の特徴です。
では、そもそもその順位は
どう決まったかと言えば、
さらにその前年の成績です。
ある年の勝数が、
後々にもずっと影響します。
だから、順位戦では
その年に昇級や降級の
可能性がないとしても、
できるだけ勝って
翌年に向けて
順位を上げておくことが
大事です。
そのため、
勝っても負けても関係ないという
「消化試合」が
生まれにくくなっています。
最後まで
緊張感のある対局が見られるので、
いい仕組みだなと思います。
見どころ④順位によるドラマ
同じ勝敗数でも
順位によって
昇級や降級が決まってしまう。
これが順位戦の厳しさであり、
これまでにたくさんのドラマが
生まれてきました。
例えば、
A級で1勝8敗で
3人が並んだとします。
このとき他に全敗の棋士がいなければ、
この3人の中から
2人が降級となります。
その場合には
降級する棋士は
「現在の順位」
で決まります。
1勝8敗の棋士の中から
現在の順位が高い順に、
8位、9位、10位
となるのです。
そして、A級では
9位と10位は降級となり、
8位は残留となります。
このように、
現在の順位が
ものすごい重要性を
持っているのです。
ただ、A級の優勝だけは、
順位だけでは決まりません。
A級の1位が同じ勝敗数で
並んだ場合のみ、
名人への挑戦者を決める
「プレーオフ」が
行われます。
2人の棋士が
同じ勝敗数で並んだ場合は、
プレーオフでもう一局戦い、
勝った方が挑戦者となるのです。
3人以上が並んだ場合は、
順位が下の棋士2名で戦い、
勝った方が順位が上位の棋士と戦う、
ということを繰り返して、
勝ち残った棋士が挑戦者となります。
2018年3月に
6人によるプレーオフという
過去に例のない事態になったことは、
記憶に新しいところです。
ただ、
このような同じ勝敗数どうしでの
対戦の機会は、
A級の優勝者争い以外には
ありません。
前年に決まった順位によって、
昇級、降級、残留が
自動的に決まってしまうのです。
リーグの最終戦に勝ったのに
順位の差で降級したり、
あるいは昇級できなかったり
といったことが
ひんぱんに起こります。
逆に最終戦に負けたのに
順位の差で残留できたりもして、
最終日の将棋の勝敗とは
別のところで
色々なドラマが生まれるのです。
毎年3月に行われる
各クラスの最終戦を
観戦するときには、
それぞれの棋士の順位を
意識すると、
さらに面白くなりますよ。
まとめ
順位戦の仕組みと
見どころをお伝えしました。
順位戦は1年かけて行われ、
注目度の高い棋戦です。
特に3月は各クラスの
最終戦が行われて、
一番盛り上がる
時期になります。
仕組みと見どころを
知っておいて、
順位戦の観戦を
さらに楽しみましょう。
順位戦の仕組みについては
こちらの記事も合わせてどうぞ。
他のタイトル戦の
仕組みについては、
こちらにまとめてあります。