将棋の段位は実力とは関係ありません。
九段の人は四段の人より
将棋が強いような気がしますが、
実はそうとは限らないのです。
それに段位は
「上がる」ばかりで「下がる」ことはなく、
有効期限もありません。
将棋の段位は
いったいどんな仕組みになっているのか
詳しく紹介します。
藤井聡太さんの昇段で注目された将棋の段位
藤井聡太七段の段位が短期間に
四段→五段→六段→七段
と連続で上がった
ときには、
将棋の段位が注目されました。
藤井聡太さんは
2020年8月20日には最年少で八段、
2021年7月3日には最年少で九段に昇段し、
これらも大きなニュースとなっています。
でも将棋に詳しくない人にとっては、
「段位」というのは
かわりにくいものです。
「段の数字が大きいと、なんとなくすごい人」
というぐらいの
感覚ではないでしょうか?
少し知識があれば
「段位が高い棋士は強い」
と思っている人もいるかもしれません。
でも実は、
段位が高いからといって
将棋が強いとは限らないのです。
どういうことなのか、
具体的にみていきます。
ちなみに藤井聡太さんは九段になっても、
「藤井聡太九段」と段位で呼ばれることは
当分の間はなさそうです。
プロの段位は実力で決まるわけではない
将棋の棋士はプロになった時点で、
「四段」となります。
そして、
棋士の段位の最高位は「九段」です。
「四段」から段位が
上がっていくわけですが、
どうすれば段位が上がるかは、
色々な条件が決められています。
わかりやすい例としては、
こんな条件があります。
- 「タイトルを1期獲得」で七段
- 「竜王のタイトルを獲得」で八段
- 「タイトルを2期獲得」で八段
- (藤井聡太さんの場合はこれ)
- 「名人のタイトルを獲得」で九段
- 「タイトルを3期獲得」で九段
- (藤井聡太さんの場合はこれ)
「タイトルを獲得する」というのは、
将棋の実力がないと
達成できない条件です。
そのため、
こうした条件だけ見れば
昇段した時点では段位と実力は対応している
と言えます。
ただ、実力とはあまり関係のない
昇段の条件もあります。
それが「勝数規定」と呼ばれるもので、
例えば以下のようなものです。
- 「七段昇段後に公式戦190勝」で八段
- 「八段昇段後に公式戦250勝」で九段
こうした「勝数規定」は、
よほどのことがない限り
長年棋士を続けていれば
いずれは達成できます。
つまり「勝数規定」で昇段した場合、
段位と実力は対応しているとは限らないのです。
「勝数規定」による昇段は
「長年お勤めご苦労さま」
という意味合いが強いと言えます。
女流棋士の場合は、
正式にプロとなると最初は「女流2級」です。
最高は「女流七段」まであります。
こちらも昇段には色々な条件がありますが、
「勝数規定」が存在している点は男性棋士と同じです。
そのため、
段位と実力は必ず対応するものではありません。
アマチュアの段位は実力とは関係ない
プロ棋士だけでなく、
将棋のアマチュアにも段位はあります。
アマチュアの段位は
厳密な定義は難しいですが、
最低の15級から最高の八段まである
というのが、
一般的な認識かと思います。
アマチュアの段位が上がる条件は、
プロほど厳密に
決まっているわけではありません。
アマチュアの段位は
新聞や雑誌に掲載された「認定問題」に
回答するだけで認定してもらえたりするため、
将棋の実力とはあまり関係がないのです。
アマチュアはプロの場合と比べて、
よりいっそう段位と実力に関係がない
と言えます。
アマチュアの段位について詳しくは
こちらの記事をどうぞ。
プロの段位とアマの段位の共通点
前述したように、
プロでもアマチュアでも
昇段したその時点でさえ
その段位にふさわしい実力があるかどうかは
怪しいところ。
そのうえ、
段位と実力の関係を
ますます壊してしまう決まりがあり、
それはプロとアマチュアに共通です。
それが以下の2点です。
- 段位が下がることはない
- 段位に有効期限はない
将棋が強かった人でも、
練習をしなければ
どんどん弱くなっていきます。
年齢がある程度以上になってくれば、
老いによる衰えもあります。
そうして将棋の実力がなくなっていっても、
段位に反映されることはありません。
将棋の段位は自動車の免許のように、
何年かごとに更新しないと無効になる、
というものでもありません。
一度その段位を認められれば、
死ぬまでその段位を名乗ることが認められる
のです。
将棋の段位はこういう仕組みですので、
プロであれアマであれ
その人の人の段位を見ても
「いま、将棋がどれだけ強いのか」
は、ほとんどわからないというのが現実です。
「段位を見れば実力がわかる」
という制度の方が
わかりやすくていいと私は思うのですが、
そうはなっていないのです。
では将棋の実力はどう見分けるか
段位はあてにならないのはわかったけれど、
あの人が実際のところ
どれぐらいの実力なのか知りたい!
と思われるかもしれません。
そんなときはどうすればいいのでしょうか。
実は、いい方法があります。
男性プロ棋士であれば、
現在在籍してる順位戦のクラス
を見れば、
実力がだいたいわかるのです。
順位戦のクラスは段位とは違い、
実力が衰えて他の棋士に勝てなくなれば
どんどん下のクラスに
「降級」していきます。
そのため、
プロ棋士になってから
ある程度の年数が経過した人であれば、
順位戦のクラスと実力が連動
してくるのです。
ただプロ棋士になってまだ年数が浅い棋士だと、
順位戦のクラスと実力が
つりあわない場合もあります。
例えば、
藤井聡太棋聖は現在B級2組に在籍していますが、
藤井棋聖は実際にはそのクラス以上の実力があると
考えている人が多いです。
順位戦のクラスは1年に1つずつしか変わらないので、
「藤井棋聖はまだ自分の実力に相当するクラスまで
昇級できていないだけ」だと判断できるのです。
女流棋士には順位戦のような仕組みはないので、
実力を見分ける方法は難しいです。
ここ数年の公式戦での成績を調べて、
それをもとに判断するぐらいしかできませんね。
アマチュアで実力が知りたい場合、
よく使われるのが
「将棋倶楽部24」のレーティング
です。
「将棋倶楽部24」は無料で対局できる
インターネットの対局場で、
利用している人が非常に多いため
アマチュアの間では共通の話題になりやすいです。
対局の結果に応じて
レーティングの点数が上下するのですが、
その点数は将棋の実力とほぼ連動します。
そのため「将棋倶楽部24で○点ぐらい」と言えば、
その人がどれぐらい強いかが判断できるのです。
「奨励会」の段位は実力を表す
ここまで「将棋の段位は実力と関係ない」
という話をしてきたのですが、
最後に例外となる世界を紹介します。
それが「奨励会」です。
プロ棋士の養成機関である奨励会は、
プロともアマとも言えない独自の世界。
奨励会の段級は7級から三段まであり、
その段位をひとつずつ上げていって、
四段に昇段すればプロ棋士になれます。
奨励会の段位は独特な仕組みとなっており、
他の奨励会員に勝てなくなれば、
プロやアマと違って「段位が下がる」ことがあります。
そのため
「奨励会においては段位は実力を表す」
と言えます。
しかも奨励会の段位を名乗れるのは、
奨励会に所属している間だけです。
たとえば、
プロ棋士一歩手前の奨励会三段まで到達した人が
奨励会を退会した場合、
その後は「元奨励会三段」と呼ばれ、
現在も奨励会にいる三段とは明確に区別されます。
言ってみれば
段位に「有効期限」がある
わけで、
プロやアマの段位とは重みがまったく違います。
奨励会は独特の厳しい世界なのです。
まとめ
将棋の段位について紹介しました。
将棋の段位の仕組みはけっこう複雑なのですが、
段位が実力を表しているわけではないことは
明確です。
段位はプロアマを問わず将棋を指す者にとって、
「名誉」という扱いだと考えるのが
一番しっくりくると思います。
「過去の名誉」は消えることはないし、
有効期限もないということですね。
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