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「盤上の詰みと罰」の感想2~霧島都にも罪と罰があるのでは~

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「盤上の詰みと罰」の霧島都

「盤上の詰みと罰」というタイトルの本作。

このタイトルが「罪と罰」を
意識していることは明らかです。

「罪と罰」は
ロシアの作家ドストエフスキーによる
歴史に残る名作と評価されている小説ですね。

その小説のことを頭におきつつ、
本作における罪と罰は何なのか、
またその罪と罰は誰のものなか、
私なりに考えました。

最初から最後まで通しで3回読んで、
がんばって頭を使いました。

すると、他の人が
あまり思いつかないようなアイデアが
浮かんできたのです。

 

ネタバレがあるので注意してください。

ちなみに冒頭のイラストの霧島都は
マンガをお手本に自分で描きました。

「盤上の詰みと罰」の感想は
こちらもどうぞ↓

目次

「盤上の詰みと罰」と「将棋めし」

「盤上の詰みと罰」は全2巻で、
第1巻はこちらです↓

 

本作は「将棋めし」の作者の松本渚さんの
デビュー作なのですが、
「将棋めし」キャラクターが
そのまま登場したのには驚きました。

まあそれは私の視点から見た順番であって、
正確な順番でいえば
「盤上の詰みと罰」のキャラクターが
「将棋めし」に引き継がれた

ということなのですが。

白河名人や小牧女流は
人柄もまったく変わっていなくて、
ただ名前が同じだというわけではなく
同一人物なのだとわかります。

こうして世界がつながっているのがわかって、
キャクターにより親近感がわきましたし、
うれしかったです。

 

「将棋めし」の記事も書いています↓

ドストエフスキーの「罪と罰」

ドストエフスキーの「罪と罰」
ものすごい長編で、
読み始めても途中で退屈して
最後まで読めない人が多いのでも有名です。

私の知り合いにもそういう人がいます。

私自身は大学院生のときに
1学年下の後輩が買ったのを借りて、
なんとか最後まで読みきりました。

ちょうど読みやすい新訳文庫が
出たばかりだったので、
運がいいタイミングでした。

全3巻だったのですが、
後輩に最終巻を返したときの様子が
なぜかはっきりと記憶に刻まれています。

大学の実験室で
金属製の大きな実験装置を動かしながら、
こんな会話をしました。

 

私「読み終わったよ。ソーニャがいいね」

後輩「ですよね!ソーニャはマジ天使ッスよね!!」

私「え、なぜ天使?天使はは言い過ぎでしょ」

その場にいた先輩「キミらいったい何の話してるの?」

 

なぜこのやり取りの記憶が
はっきりと残っているのかは
自分のことながら謎です。

まあ「罪と罰」は読むのが大変なので、
最後まで読んだ人であれば
そのときの読書体験の記憶
何かしら残っているのではないでしょうか。

ちなみにソーニャというのは、
主人公のラスコーリニコフの心を救った
美しい女性です。

「罪と罰」では、
主人公の青年のラスコーリニコフが
殺人を犯します。

ラスコーリニコフは
自分が犯人だとバレないようにしつつ、
自分のやったことを
頭の中で正当化しようとするのですが、
良心に苦しめられます

そして最後は自分の罪を認めて、
牢屋に入ることになる。

「罪と罰」はそんなお話です。

新也にとっての罪と罰

「盤上の詰みと罰」においては、
「罪」や「罰」という言葉は
あまり強調されません。

本作における罪と罰とは、
何だったのでしょうか。

まずわかりやすいのが、
新也にとっての罪と罰です。

本作の中で「罪と罰」という言葉は、
最終話のひとつ前の第11話の副題として
1回だけ使われています。

そして、
「罪」という言葉も
その第11話の新也のモノローグの中で
1回だけ登場します。

あの日対局してしまったという
都を壊してしまったという罪を
わびることもできない

 

ここで新也が罪の意識を持っていることが
はっきりと示されます。

さらに新也はこうも考えています。

俺はつぐないの代わりに
アイツの望むことを
できるだけ手伝ってやることしかできない

 

都の対局相手を探す旅を手伝うことが
つぐないだと考えているのですね。

まあでも、
その旅先で探す相手が見つかることは
決してないことは、
新也がいちばんよくわかっているわけですが。

罪と罰のうちの「罪」とは、
都と対局して記憶障害を起こしてしまったこと

では「罰」は何かというと、
記憶を1ヵ月ごとになくしてしまう都を
近くで見つづけること

だと言えるでしょう。

 

新也は都の記憶がリセットされる瞬間に、
毎回立ち会っているようです。

「女流棋士は引退した」
「このやりとりももう59回目だ」
と言う回想シーンがあります。

記憶がリセットされてしまうことを知った都は
泣き叫んで悲しむのですが、
こんな都の様子を59回も見るのは
精神的にかなりキツイことのはず。

新也にとってはまさに「罰」と言えます。

ドストエフスキーの「罪と罰」でも、
ラスコーリニコフは自分がやってしまったことを
後悔して苦しむのですが、
本作の新也もそれと同じです。

都にも罪と罰があるのではないか

新也が「罪と罰」を抱えているのは
わかりやすいのですが、
私にはそれだけではないように思えます。

都にも「罪と罰」があるのではないかと。

そう思うのは、
ラストの対局が終わったときに
都が新也にあやまっているからです。

こんなに近くにいたのに
ずっと見つけてあげられなくて
ごめんなさい

 

この言葉から、
都も新也に対して
なにか罪を感じていたことがわかります。

この二人はお互いに
罪の意識を持っていたのです。

 

新也に罪の意識があると書きましたが、
改めて考えると
新也はべつに悪いことはしていません

「都の記憶を消してやろう」
などという悪意はまったくなかったのです。

「彼女を意地悪い状況に
追いやっているのはわかっていた」
という思いはありましたが、
将棋において相手の狙いを前もって受けるのは
あたりまえの戦い方です。

そもそも、
新也は都の願いに応じて
対局をしてあげたのですから、
あの対局で新也が「罪」を犯したというのは
違和感があります。

この点、
ラスコーリニコフの場合は
「人を殺す」という明確な罪を犯しているので、
新也とはまったく状況が違うところです。

都の記憶障害は都自身への罰

では、
都が抱えてしまった記憶障害というのは
「罪と罰」という視点から見たときに
どうとらえられるのでしょう。

私の考えは、
都の記憶障害は都自身への罰
なのではないかということです。

その罰は何に対してものかというと、
新也を壁の中に閉じこめつづけた罪
です。

新也は都に近づき過ぎないように、
都に対してずっと心の壁を作ってきました。

都に対する恋心を素直に出せないことで、
新也は苦しい思いをしつづけてきたのです。

都は新也の心の壁に気づいていながら
17歳になるまで放っておいた。

これは罪だと言えないでしょうか。

 

また、書いていながら
まったく別のアイデアも浮かびました。

都には
新也の心の壁をむりやり壊そうとした罪
があるというものです。

この考えのヒントとなるのが、
新也との対局中に
都が5年前の自分自身に語った言葉。

他の誰よりも対局がしたかった
彼はいつも一緒にいてくれたのに
いつもどこか壁があったから…
そうすればこのさびしい気持ちが消えて
彼に近づけると思った

 

この発言に注目すると、
都は自分勝手な希望をかなえるために
新也と対局したと取れます。

将棋に全力をかける都のためを思って、
あえて心の壁を作りつづけた新也。

その壁をむりやり壊そうとしたことは、
罪だと言えないでしょうか。

正反対の都の2つの罪

まったく正反対の2つの罪を
思いついてしまいました。

・壁をそのままにしていた罪
・壁をむりやり壊そうとした罪

なんだか自分が
なんでもいいから罪を追求して
都を有罪にしようとしている
検察官にでもなったような気分です。

 

そもそも、
新也だけに罪があるのであれば、
都だけが記憶障害で苦しむのは
おかしな話に思えるのです。

新也に罪があるのであれば、
その罰として
新也の心や体に異常が起きるべきではないかと。

そのことから考えても、
新也だけではなく都にも「罪と罰」がある
のは間違いなさそうです。

 

上に挙げた都の罪のどちらが
作者の意図としてありえそうかを考えると、

・壁をむりやり壊そうとした罪

の方だと思います。

なぜならば、
ラストの新也との対局が終わってからも
都の記憶障害は治らなかったからです。

新也との二度目の対局によって、
都はようやく新也の心の壁を
壊すことができました。

「壁をそのままにしていた罪」
があったのであれば、
壁を壊したことによって
その罪は許されるはず。

でも、そうはなりませんでした。

 

その一方で、
「壁をむりやり壊そうとした罪」
があったのであれば、
壁を本当に壊してしまったことは
より大きな罪を重ねることになります。

だから、
記憶障害という都にとっての「罰」は
そのまま残り続けた

そういうことなのではと
私は考えました。

まとめ

「盤上の詰みと罰」の感想その2。

本作のタイトルは
ドストエフスキーの「罪と罰」を
意識しています。

罪と罰というのは
都の記憶を奪うことになった
新也にあるのはもちろんですが、
都自身にもあるというのが私の考え。

新也の心の壁を
そのままにしてしまっていたことや、
逆に壁を壊そうとしたことが
都の罪と言えそうです。

そしてその罰が、
1ヵ月ごとの記憶のリセットなのです。

 

私は最初に読んだときには
こうしたアイデアは思いつきませんでしたが、
3回読みながら色々考えることができました。

深いメッセージが込められた
いい作品だなと思います。

 

 

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「盤上の詰みと罰」の霧島都

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