オランジュリー美術館といえば、
モネの「睡蓮の間」が有名です。
これまで、モネの睡蓮の絵の良さが
イマイチわかっていなかった私ですが、
今回はその素晴らしさが少し理解できました。
「睡蓮の間」を訪れた感想を
お伝えします。
オランジュリー美術館とは
オランジュリー美術館は、
ルーブル美術館やオルセー美術館ほど
有名ではありませんが、
立派な美術館です。
場所は、誰もが訪れる
ルーブル美術館のすぐ近くです。
ルーブル美術館の目の前には
チェイルリー公園という
大きな公園があるのですが、
その公園の片隅に
オランジュリー美術館は位置しています。
個人が保有していた
コレクションが寄贈され、
それが元になって美術館になったというのが
オランジュリー美術館の成り立ちです。
色々な画家の作品が幅広く収められていて、
とても見ごたえがあります。
私の好きなルノワールの作品も充実しており、
大満足しました。
モネの「睡蓮の間」とは
幅広いコレクションを誇る
オランジュリー美術館ですが、
一番の目玉は何と言っても
モネの「睡蓮の間」です。
クロード・モネは
印象派の代表的な画家ですが、
特に睡蓮を題材とした絵が有名。
「睡蓮の間」では、
大きな広間の壁いっぱいに
その睡蓮の絵が掲げられています。
しかも、その部屋はひとつではなく
2つあって隣り合っており、
通路でつながっています。
それぞれの部屋は楕円形で、
2つの部屋に4枚ずつ、
すごく大きな睡蓮の絵が
見る人を取り囲むように配置されています。
部屋の見取り図がこちら↓
実は、この2つの部屋。
楕円形の部屋が2つ組み合わさって、
「∞」(インフィニティ)の形になっているのです。
なんという凝った構造でしょう。
美術館パンフレットにも
「永遠に描かれた自然」という表現がありますし、
「∞」の形を意識しているのは
間違いなさそうです。
「睡蓮の間」の魅力
「睡蓮の間」の2つの部屋は
この部屋を訪れる人が
どう感じるかということを
徹底して考え抜かれて
設計されていると感じます。
楕円形の部屋の壁を
絵で埋め尽くすというのは、
たしかにすごい効果があります。
これは写真では伝わらない感覚。
四方を絵に囲まれることで、
絵に包み込まれているような
気分になるのです。
そして描かれている絵が、
モネの睡蓮だというのがたまりません。
睡蓮の絵はぼんやりとしてとらえどころがなく、
どう見えるかは
見る人しだいです。
押しつけがなくて、
自由でゆったりとした気分で
絵に向き合えます。
そして、この絵のモデルとなっている
ジヴェルニーの庭の水辺を
歩いているような気分になるのです。
8枚の睡蓮の絵は
東の朝から西に夕日が沈むまでという
時の流れを連想させるように
配置されています。
明るい絵、暗い絵、
様々な色合いのが楽しめます、
天井からは
太陽の光を取り込むようになっていて、
自然の中にいる感覚が味わえます。
こうした素晴らしい展示室は、
2001年から6年間に及ぶ大規模な改装によって
作られたものです。
そうした改装のおかげで
今、こうして私達が
素晴らしい展示を満喫することができるので
ありがたい話です。
ただ、ひとつ不満点を挙げるとすれば
人が多すぎるところですね。
大きい絵なので、
全体を視界に入れながら
じっくり鑑賞するのが難しいです。
写真の撮影がオーケーなので、
写真を撮る人や映るためにポーズを取る人が
絵と自分の間に入ってきてしまいます。
人気の絵であるがゆえの悩みですね。
1927年にこの睡蓮の絵が公開されたときには、
その素晴らしさが認められることはなく、
展示室も人はまばらだったようです。
時代が変わると
絵画の評価というのは
ずいぶん変わるものですね。
睡蓮の絵の魅力がわかった
私は、これまでモネの描く睡蓮の絵の魅力が
イマイチわかっていませんでした。
ですが、今回は良さが前よりもわかった気がします。
睡蓮の絵はとらえどころがないのですが、
「睡蓮の間」には理解しやすい絵がありました。
絵の中に「あるもの」があると、
とてもわかりやすくなるのです。
「あるもの」とは、「柳」です。
数ある睡蓮の絵の中でも、
柳が描いてある絵が私は気に入りましたね。
柳のある絵は2つあります。
冒頭の写真の絵と、こちらの絵です↓
柳の幹とそこから垂れ下がる枝や葉によって、
目のやり場が固定されます。
それに絵の中での
「上下」の方向が明確になることで、
安定感と安心感が生まれます。
そんな風に感じられることで、
ぼんやり抽象的な絵に
いいバランスが生まれている、
それが私の感想です。
たくさんあるモネの睡蓮の絵の中で、
お気に入りの絵ができた。
それが「睡蓮の間」を訪れた
一番の収穫となったと、
自分では感じています。
「睡蓮の間」の魅力は、
その場に行ってみないと
なかなか伝わりません。
現地に行ったからこそわかる魅力が
この部屋には詰まっていますので、
オランジュリー美術館の「睡蓮の間」、
ぜひ訪れてみてください。