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「ものの歩」全5巻の感想、連載打ち切りの理由を2つ考えてみた

 
「ものの歩」全5巻の感想
この記事を書いている人 - WRITER -
梅澤 浩太郎
将棋講師。棋力はアマ四段。 インターネット上で将棋を教われるサイト、将棋マッチを開設・運営しています。 1987年12月生まれ。群馬県在住。 このブログでは自分でイラストを描きつつ情報発信中。叡王戦を支援しています。 将棋を始めたころからずっと、一番好きな棋士は藤井猛九段。 海外旅行が好きで旅行記も書いています。

「ものの歩」全5巻の感想

「ものの歩」は
将棋を題材にした漫画作品。

全5巻を読んでみると
面白かったのですが、
これは「週刊少年ジャンプ」では
連載打ち切りになってしまった
作品です。

なぜ人気が伸びなかったのか、
その理由を2つ考えてみました。

その2つとは
「ライバルがいない」
「かやね荘の深掘り不足」
です。

本文中には
少しネタバレがあります。

冒頭のイラストは
主人公を私が描いたものです。

将棋を題材にした「ものの歩」

「ものの歩」は
2015年から2016年にかけて、
「週刊少年ジャンプ」
連載されました。

将棋の盤面も
力を入れて用意されており、
監修は橋本崇載八段です。

ただ、人気があまり
伸びなかったのようで、
全43話で連載打ち切り。

単行本は全5巻

最終第5巻では
作者の池沢春人さんが
突然の連載終了に関して
触れています。

やはり、
本当はもっと
続けたかったのに
打ち切られて
しまった
ようです。

ストーリーとしては
高校1年生の主人公が
将棋に出会い、
プロを目指しながら
どんどん強くなっていく
というもの。

王道のストーリー
だと感じます。

 

第1巻がこちら↓

 

「ものの歩」を読んだ感想

私はつい最近、
「ものの歩」を
全巻通して読みました。

読むきっかけになったのは、
電子書籍の全巻セットが
安く売っていたから。

「ものの歩」の存在は
以前から知っていて、
ネットの試し読みで
第1話を読んだことも
ありました。

せっかくの機会なので
買ってみて、
今さらながら
通しで全巻を読んでみました。

 

感想としては、
けっこう面白い

対局シーンは
盛り上がって、
キャラクターに
感情移入できます。

 

主人公の前に敵として現れる
対局者たちが、
どんな思いを抱えて
戦っているのか。

そして、
主人公との対局を通じて
何を感じるのか。

そういう
内面のぶつかり合い
伝わってきます。

主人公と敵の双方が、
対局を通じて
成長していき、
すがすがしさを感じました。

 

これだけ面白いのに、
どうして連載打ち切りに
なったのか。

それを思わず
考えてしまいます。

「週刊少年ジャンプ」は
読者からの
アンケートを重視
して
連載作品を決めることで
有名です。

連載が打ち切られた
ということは、
読者からの支持が
得られなかったことに
他ならないのでしょう。

 

なぜ人気が
伸びなかったのか。

私が考えた理由は
大きく2つです。

理由①ライバルがいない

理由の1つ目は、
「主人公の絶対的なライバルが
いなかった」

ことです。

 

「ものの歩」を読んでいて
頭に浮かんだのは
「ヒカルの碁」です。

同じく「週刊少年ジャンプ」で
連載され、
全189話、単行本にして23巻
まで続いた人気漫画。

「ものの歩」と「ヒカルの碁」は
ストーリーの流れが
よく似ています

 

主人公がゲームの
ルールを覚えるところから
始まって、
学校の部活の大会の
団体戦に出場。

その後にプロ養成機関に入って
プロを目指すと。

もちろん違うところは
色々あるのですが、
私が一番気になったのは
ライバルの存在です。

 

「ヒカルの碁」では
塔矢アキラという
主人公のライバルがいて、
彼と主人公の関係が
物語の骨格になっています。

私は中学生の頃に
「ヒカルの碁」が
大好きだったのですが、
当時から一番の見どころと
思っていたのは
主人公と塔矢アキラの
バチバチした
ライバル関係
です。

一方の「ものの歩」には
塔矢アキラに相当するような
ライバルがいませんでした。

やはりこういう成長物語には
ライバルの存在は必要で、
それがいなかったのは
人気を得るうえでは
大きなマイナスに
なったのではないかと。

 

ものの歩では
主人公の
高良信歩(たからしのぶ)
は色々な相手と
対局します。

その対局の途中で
対戦相手の過去の話が
盛り込まれて、
相手の対局にかける
思いなどが伝えられ、
物語が盛り上がります。

ただ問題は、
その盛り上がりが
その一局限りと
なってしまっている
こと。

また次の対局が始まれば、
その相手の過去の話が
新たに始まり、
つながりがないのです。

 

これといった
ライバルがいなかった信歩。

それに対して
むしろ明確なライバルが
設定されていたのは
信歩の団体戦のチームメイトである
藤川竜胆(ふじかわりんどう)。

彼には
百合峰蒼馬(ゆりみねあおば)という
幼少期からのライバルがいます。

こういう存在が
主人公にもほしかった。

 

信夫は将棋のルールすら
知らなかったという設定なので
昔からのライバルを
用意するのは難しい
かもしれません。

本来は、
信夫が住む「かやね荘」
ライバルがいればいいのですが、
そうならなかったのは
もったいなかった。

「ものの歩」の
面白い舞台設定が、
「かやね荘」という
シェアハウスで
奨励会員達が
共同生活をしている

ということ。

そもそも、
手違いのせいで
この「かやね荘」に
信歩が入居するところから
物語が始まるのです。

 

常に身近にいる同居人なら
共に成長していくのには
うってつけで、
本来なら
うまくライバルになれそう。

ただ、
信歩の他に5人も
同居人がいるのに、
主人公以外は
すでに奨励会員なので、
全員が圧倒的な格上

「かやね荘」で
信歩が将棋を指しても、
その実力差のせいで
なかなか熱い展開に
ならないのが
苦しいところ。

ここにも
信歩のライバルは
いないのです。

 

そうした事情があるため
主人公の戦いの場は
外に求めざるをえず、
そのせいで
「かやね荘」の
存在感が薄くなって
しまっています。

そしてこの点が、
私が考える
連載打ち切りの理由
その2につながります。

理由②かやね荘の深掘り不足

理由の2つ目は、
「かやね荘のメンバーが
深掘りされなかったこと」

です。

ちなみに「かやね」とは
榧(かや)の駒音(こまね)が
鳴り止まないことからの
名付けです。

奨励会員5人が
暮らしている
「かやね荘」。

「かやね荘」のメンバー達は
物語の中で
もっと活用できたはずなのに、
もったいなかったと
感じました。

第1巻の最初のでこそ
「かやね荘」のメンバーが
活躍していたものの、
話が進むに連れて
出番がなくなっていきます

第2巻、第3巻、第4巻では
信歩の大会の話、
第5巻では奨励会入会試験の話なので、
「かやね荘」は
あまり登場しないのです。

 

本当は
「かやね荘」にいる人達は
それぞれ色々な事情を
抱えているはず

特に高校生の年齢の
奨励会員たちは、
親との関係なども
複雑なものがありそうです。

そういったところを
掘り下げていけば、
面白い話が
たくさんできたはずです。

なんなら
一人ずつ順番に
焦点を当てて、
群像劇を描くことも
できたでしょう。

それならば
「寮」とという舞台を
うまく活用しています。

 

ただそんなことを
描写していくと、
メインテーマである
主人公が将棋を強くなって
プロに上り詰めていくという
物語の方が
おろそかになってしまいます

難しいところです。

 

また他の作品と
比べてしまいますが。

将棋関係で
群像劇を描くといえば
「3月のライオン」や
「りゅうおうのおしごと」が
あてはまります。

この2つの作品では、
主人公の成長を
描きつつも、
その周囲の人達の描写
多くなっています。

 

主人公の成長から
話題がずれてしまっているのに、
どうして面白いのか。

どうして物語が
成立するのか。

改めて考えてみて、
わかりました。

 

物語の開始時点で、
すでに主人公が
十分に強い
からです。

「3月のライオン」の
桐山零は
17歳でプロの五段。

「りゅうおうのおしごと」の
九頭竜八一にいたっては
16歳で「竜王」の
タイトルホルダー。

両者とも
もはや将棋の「伸びしろ」が
もうあまりないのです。

だからこそ、
他のキャラクターに
焦点を当てるのが
理にかなっている
わけです。

「3月のライオン」であれば
三月町に住む川本3姉妹の物語が
描かれます。

「りゅうおうのおしごと」であれば、
女子小学生の弟子を二人も引き受け、
彼女らの成長の物語が
展開するわけです。

 

「ものの歩」は、
「主人公の成長の物語」
なので、
それをとにかく
大事にするべきです。

それなのに
かやね荘という、
「群像劇」が展開されると
読者が期待してしまう舞台を
持ち込んでしまった。

そのことが
やり過ぎだった
気がします。

 

身近にいる
「ワケあり」っぽい
人たちを放っておいて、
かやね荘の外ばかりで
話が展開していく。

読者にとっては、
積み残された問題が
いつまでも解決されない

感じがして、
不満がたまってきます。

「主人公の成長」と
「群像劇」を
両方やろうとすると、
どちらも中途半端になって
消化不良になってしまう

ということですね。

 

「ヒカルの碁」のように
主人公の成長と
ライバルとの戦い

の話に絞るか、
「3月のライオン」や
「りゅうおうのおしごと」
のように
主人公の周囲の人の物語
で盛り上げていくか。

どちらかに決めないと、
高い人気を維持するのは
難しそうです。

まとめ

「ものの歩」の感想と、
連載打ち切りになった
理由について
私が考えたことを
書きました。

「ものの歩」は読んでみて
面白かっただけに、
打ち切られたのは
もったいないと感じます。

これから描かれるはずだった
信歩の奨励会での戦いも
見たかったです。

 

ただ、あえて言えば、
全5巻と短いので
気軽に手を出しやすい
とは言えます。

もしまだ
読んだことがなければ、
「ものの歩」を
この機会に読んでみては
いかがでしょうか↓

 

 

 

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