「りゅうおうのおしごと!」の12巻が発売になりましたね。私は楽しみにしていたので、さっそく買って読みました。
本巻では長くづづいた奨励会の戦いがついに決着。まさかあんな結末になるとは!ということで、感想を書いていきます。ネタバレがあるので注意してください。
冒頭のイラストは自分で描きました。銀子ちゃんは11巻のときに描いたので、今回はあいちゃんです。
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「りゅうおうのおしごと!」の12巻
「りゅうおうのおしごと!」の12巻はこちらです。
表紙の銀子ちゃんがかわいいですね!11巻に引きつづき、12巻も八一と銀子を中心にストーリーが展開しました。
12巻のいちばんの見どころは、なんといっても銀子の奨励会の戦いが決着したことです。本巻の最後にある著者の白鳥士郎さんのメントには「6巻から続いてきた奨励会編」という言葉がありました。
そんなに前から白鳥さんは「奨励会編」として物語を書いてきたんだ!と私は驚いたのですが、「6巻から」という部分には納得しました。というのも、「りゅうおうのおしごと!」は、5巻まではっきりとした区切りがあるからです。
5巻というのは八一と名人が竜王戦を戦った巻で、そこで第1巻からの伏線をきれいに回収してひとつの終わりを迎えます。アニメも5巻の内容までで完結でした。
その後の6巻の内容はどんなものだったかうろ覚えだったので改めて見直してみると、そのとき銀子はまだ奨励会二段でした。銀子は辛子将司の奨励会編入試験の試験官を務めていたり、椚創多と三段昇段をかけて対局したりしていました。このころから12巻の三段リーグで戦う面々が描かれていたわけです。
6巻から12巻までの7冊が「奨励会編」だったと考えると、改めて奨励会の戦いがいかに長くて辛いものだったかというのが思い出されます。そうして積み上げてきたものを集めてクライマックスを迎えたのがこの12巻なのです。
プロ棋士になれたのは・・・
奨励会のストーリーでの最大のポイントは、誰がプロになれるのか?ということです。奨励会の三段リーグは、上位2人が昇段してプロ棋士になれるというルールです。
さらに3位になる(次点をとる)のを2回でも昇段できるという決まりもあります。このことをふまえて、
私も誰がプロになりそうかを予想しながら読んでいました。
- 史上初の女性プロの空銀子
- 史上初の小学生プロの椚創多
- そして次点2回で鏡洲飛馬
物語の盛り上がりを考えれば、この3人の同時昇段かなと思っていました。なかでも鏡洲さんは年齢制限があるので、今回の三段リーグで昇段できないと奨励会を辞めることになります。
これまで鏡洲さんは数多くのエピソードとともに魅力的に書かれてきたので、プロになれないのはありえないだろう。そう私は思っていました。
この3人の中で予想が外れてプロになれないとすれば、椚創多くんかなという思いもありました。彼は今期の三段リーグで上がれなかったとしてもどうせすぐにプロになれるので、昇段できなくても特に問題はないかなと考えたのです。「次の三段リーグでダントツトップでプロになった」などと書くだけで、カンタンにプロ棋士にできるキャラクターですからね。
逆に銀子ちゃんの場合は命を削りながら三段リーグを戦っていて読んでいるだけで苦しくなる描写ばかりだったので、また三段リーグを戦わせるのは厳しそう。だからプロになれるとすれば今期の三段リーグしかないだろうと私は思っていました。
ところが。こんな私の予想と違って、実際に昇段したのは以下の3人でした。
- 空銀子
- 椚創多
- 坂梨澄人
これは大どんでん返し!びっくりしました。銀子と創多は予想通りでしたが、まさか鏡洲さんが昇段できないとは。そして代わりに、坂梨さんが上がるとは。
坂梨さんはこれまでそれほど描写が多いわけではなかったので、鏡洲さんを押しのけて昇段するとはかなり意外でした。4連敗からの14連勝なんて、さすがに予想できません。
これは作者の白鳥さんが狙っていたドッキリだったと思うので、私はそれにまんまと引っかかりましたね。
魅力的な鏡洲飛馬
どうして鏡洲さんが昇段できなかったのかというと、作者の白鳥さんとしてはこれによって奨励会の厳しさを表現したかったのかなと思いました。
これまでさんざん「奨励会は地獄だ」書いてきておいて、それでもけっきょく最後は読者がプロになってほしい人がプロになる。それではあまりにご都合主義で甘すぎる、とも言えますからね。
私は将棋ファンとして現実の将棋界を長年見てきていますが、本当に奨励会は残酷なんです。「あとがきに代えて」では白鳥さんはこう書いています。
夢を叶えた先にも苦難はありますし、夢を叶えられなくても幸せはあります。
銀子や鏡洲がどうなっていくのか、もうしばらく見守っていただければ幸いです。
わざわざ名前を出すあたり、白鳥さんも鏡洲さんが昇級できなかったことには、思うところがあることが読み取れます。今後、鏡洲さんがどうストーリーに関わってくるのか注目です。
ちなみに将棋好きの人には言わずもがなだと思いますが、鏡洲飛馬のモデルは都成竜馬六段ですね。名前からして似ています。
イケメンで、宮崎県出身で、なかなかプロになれずに苦労して、人に優しい鏡洲さん。12巻を読んでいて、私はその姿が都成六段と重なって感情移入してしまいました。
色々あった12巻でしたが、本編のラストシーンは鏡洲さんが創多の肩にネクタイを掛ける場面。創多くんは初登場のころは
冷たいコンピュータのようだったのが、どんどん人間臭くなってきて好感度が上がりまくりです。
こんなシーンで奨励会編が終わるとはまったく予想していませんでしたが、いい締めだったと思います。
ギャップとオールスター
三段リーグが最終盤ということで、本巻ではふだん以上にぶっそうな言葉が飛び交いました。「死ぬ」とか「殺す」とか。
そんな壮絶な奨励会の描写があるかと思いきや、急に小学生女子のほんわかした話やギャグに切り替わって、読んでいてギャップがすごかったです。奨励会の話だけだとどうしても話が暗くなってしまうので、シャルちゃんをはじめとする「JS研」の出番があっていいバランスになっていました。
11巻では八一と銀子に話が集中していましたが、12巻ではオールスターという感じで多くのキャラクターが登場したのはよかったですね。特に天ちゃん推しの私はニッコリでしたが、これについて書くと長くなるので別記事にします。
あとオールスターの中で月夜見坂さんがなかなか出てこなくて気になっていたところ、とっておきの出番が用意されていてうれしかったです。八一を銀子に届ける役目とは、最後においしいところを持っていきました。
「感想戦」での不穏な予告
月夜見坂さんといえば「感想戦」。八一と月夜見坂さん、それに供御飯(くぐい)さんの3人でクスッと笑える寸劇が行われるのが毎巻の末尾の恒例です。
この「感想戦」のコーナーを楽しみにしている人は、私も含めて多いのではないでしょうか。シリアスな話がつづくこの12巻のようなときこそ、最後に「感想戦」で息抜きをして本を読み終えたいところです。
ところが。笑うつもりで気楽に読み始めたらとんでもなかったです。この12巻に限っては、「感想戦」も不穏な空気でした。次巻以降の展開の予告のような内容です。
最後に「西の魔王」という恐ろしげな呼び名まで登場して、八一の「圧倒的な才能(ちから)」がいったいどんな事件を引き起こすというのでしょうか。長かった奨励会編が終わって、13巻からはどんなストーリーが展開されるのか、注目です。
まとめ
「りゅうおうのおしごと!」12巻は奨励会編のクライマックスでした。銀子と創多がプロになるという予想どおりの結果があった一方で、鏡洲さんは奨励会を退会になるというまさかの展開もありました。
これまでのキャラクターが総出演して、オールスターで楽しかったです。「感想戦」での話がどう次巻につながっていくのか、つづきが気になります。
12巻の感想について、天ちゃんの活躍など恋愛の話はこちらに書きました。
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