Eテレの将棋フォーカスは
毎週日曜10時からの30分番組で、
将棋ファンにはおなじみです。
将棋フォーカスの前半は毎回、
講座の時間。
この講座の内容が難しすぎるので、
私はがっかりしています。
もっと初心者向けの内容を
やるべきです。
この番組は多くの人が観ているだけに
色々な意見があるかと思いますが、
私がなぜ
「もっと簡単にするべき」と考えるのか、
それには理由があります。
将棋フォーカスの講座
将棋フォーカスの講座は、
半年ごとに講師とテーマが
変更されます。
現在放送されているのは、
10月から始まった
「太地隊長の角換わりツアー」。
講師は中村太地七段、
聞き手は加藤桃子女流三段で、
「角換わり」戦法を
テーマとしています。
ちなみにひとつ前の講座は
2019年4月~9月の
「菅井やんちゃ振り飛車」。
講師は菅井竜也七段、
聞き手は鈴木環那女流二段でした。
これら2つの講座は、
どちらもレベルが高いです。
アマチュア初段以上の棋力がないと、
内容を理解するのは
難しいのではないかと思います。
「菅井やんちゃ振り飛車」が
難しい内容だったので、
その後に始まる講座は
もっと簡単なものにならないかと
私は期待していました。
ところが、
「太地隊長の角換わりツアー」は
まだ放送は3回ですが、
やはり高度な内容。
そもそも「角換わり」が
難しい戦法であるうえ、
プロの最先端の将棋を扱おうとすれば
レベルを低く抑えるのは不可能です。
「太地隊長の角換わりツアー」では
今後も難解な講座が
続いていくことが予想されます。
私の知り合いに
将棋は初心者レベルながら、
将棋フォーカスを毎週録画して
観ている人がいます。
話を聞くとその人は毎回
前半の講座は早送りで飛ばして、
後半だけ観ているそう。
なぜなのか理由を聞いたところ、
「講座は難しすぎてわからないから」
と言っていました。
これが現実です。
「難しい」と感じる理由
講座が「難しい」とか「レベルが高い」
などと言っていますが、
なぜそう判断できるのか説明します。
「菅井やんちゃ振り飛車」でも
「太地隊長の角換わりツアー」でも、
プロの実戦に現れるような
指し方を扱っています。
プロの指し方は、
色々な技を組み合わせて使うので、
狙いが実現するまでに、
例えば10手など
かなり手数がかかります。
そうすると、
10手後までの手順を
すべて説明しないといけません。
しかも、
その10手の中では
プロは色々な技を使うので、
棋力が低い人であれば
その中の1手を理解するのにも
丁寧な説明と時間が必要です。
でも講座の時間は限られているので、
1手ごとにそれほど時間を
かけるわけにもいかず、
あっという間に10手後の局面まで
進められます。
そして、その局面で
「はい、攻めが成功しましたね」
などと解説されるのが
よくあるパターン。
しかし、
なぜその局面になるのかという
過程についていけなければ、
視聴者はおいてけぼりで
チンプンカンプンなままです。
そういうことが
実際に起っているので
「難しい内容だな」と
私は感じるのです。
どれぐらい棋力の人をターゲットにするか
将棋講座のレベルを
どの程度にするべきなのかというのは、
実際には難しい問題です。
というのも、
将棋フォーカスは
色々な棋力の人が観るからです。
初心者から高段者まで
幅広い視聴者がいる中で、
すべての人が満足する講座にするのは
そもそも不可能です。
難しい内容では
初心者などには理解できない一方、
簡単な内容にすれば
有段者の人には物足りなく
なってしまいます。
しかも、
テレビでの講座で
理解してもらうのは
そもそも大変です。
もしリアルな場での講座であれば、
相手の反応を見て
理解できているかを確認しながら
進めることができますが、
テレビではそれができないからです。
すべての人を満足させることは
できないという前提のうえで、
講座のターゲットとなる
棋力のレベルが決められています。
ここ数年の傾向を見ると、
このターゲットとなるレベルが
高すぎるのです。
ちなみにこれは
講座の講師を務める棋士の
判断ではありません。
棋士はあくまでも、
求められたレベルの講座を
用意しているだけ。
ターゲットのレベルを決めているのは
プロデューサーなど、
番組制作者の人達です。
初心者向け講座をやるべき理由
私は将棋フォーカスの講座では
将棋の初心者向けの内容をやるべき
だと考えます。
なぜなら、
週に1回10分程度の講座では、
初心者向けの方が効果があるから
です。
棋力の高い人向けの講座を
やるのであれば、
10分という時間は短すぎます。
有段者が実戦で使えるレベルでの
戦法講座となると、
細かい変化手順などをカバーして
体系的に説明する必要があります。
そうしなければ、
その講座の内容を実戦で試したときに、
すぐに未知の局面になってしまうため
役に立ちません。
しかし、10分間で説明できる
手順の量はごくわずか。
そして、続きは次回にやるとしても
それは1週間も後のことで、
そのころには
細かい手順は忘れていまっています。
つまり、
今の将棋フォーカスの講座の時間で
棋力の高い人の役に立つ講座を行うのは
難しいのです。
では、有段者はどのように
戦法について学ぶかといえば、
定跡書や実戦です。
有段者であれば
難しい棋書でも読んで理解できますし、
棋書であれば細かい手順をカバーしながら
体系立てられた戦法を学べます。
また、棋力が高ければ
人から教わらなくても
自分やプロの実戦から
多くを学び取ることができます。
棋力の高い人は
テレビの将棋講座で学ばなくても、
他の手段で強くなれるのです。
一方で、
将棋をはじめたばかりの初心者は
どうでしょうか。
初心者の場合は
そもそもひとつの戦法について
高いレベルで理解する必要はなく、
ひとつひとつの手筋や技を
覚えることが大切です。
そして、
手筋や技を紹介するのであれば、
10分程度の講座の時間でも十分です。
毎週ひとつずつ手筋を覚えていけば、
上達に大いに役立ちます。
毎回が独立した内容でできるので、
前の週でやったことがうろ覚えでも
問題ありません。
つまり、
毎週10分だけという
将棋フォーカスの講座のやり方は、
初心者向けの内容にこそ
合っているのです。
しかも、
初心者だと有段者よりも
他の手段で強くなるのが大変
という事情もあります。
将棋の本を読むのは
難しすぎる場合があります。
自分やプロの実戦から学んで
戦法や手筋を覚えるのも、
一人でやるのは厳しいでしょう。
だからこそ、
テレビの講座が頼りになるのです。
このように、
将棋フォーカスの講座では
有段者向けの内容を扱うよりも
初心者向けにした方が
効果が高いです。
それにも関わらず、
将棋フォーカスの講座が
難しい内容ばかりなのは、
もったいないと感じるのです。
向井葉月さんのMC開始が絶好の機会
特に今年の4月からの講座では、
初心者向けの内容にしてほしい
ところでした。
それは、
4月からは将棋フォーカスのMCを
新たに向井葉月さんが務めているからです。
前任の伊藤かりんさんは
番組MCをやりながら
将棋の勉強をした結果、
初段の棋力に達しました。
一方、新任の向井さんは
まだ将棋は初心者です。
だからこそ、
このタイミングで
番組内で初心者向けの講座をやれば、
視聴者と一緒に向井さんも学んで、
将棋を強くなっていくことができたはず。
初心者向けの講座を始めるのには
2019年4月は
絶好の機会だったのです。
そして、もし4月から
初心者向けの講座をやれば、
それ以降の講座にも
自然につながります。
向井さんの将棋の上達に合わせて
少しずつレベルを上げていくことで、
向井さんにとっても視聴者にとっても
難しすぎることのない
ちょうどいいレベルになるのです。
ここ数年で唯一の初心者向け講座としては、
2018年4月~9月放送の佐藤紳哉七段による
「佐藤紳哉のエンジョイ将棋」
があるのですが、
あのレベルの講座を私は期待したのです。
しかし実際には、
4月から始まった講座は
「菅井やんちゃ振り飛車」という
ハイレベルなものだったので、がっかり。
ただ、「菅井やんちゃ振り飛車」
の講座をやることは
向井さんがMCをやることよりも前に
決定していた可能性があります。
そのため、
向井さんに合わせて
初心者向けの講座をやることは
日程的にムリだったかも
しれないのです。
そんな事情があるかもと考えて
「次の講座こそは初心者向けのものを」
と私は待っていたのですが、
その講座の終了後に始まったのは
「太地隊長の角換わりツアー」
というこれまた難解な講座。
どうやら将棋フォーカスの番組制作者は、
講座で初心者向けの内容を
やるつもりはなく、
有段者向けのハイレベルなものをやる
という方針のよう。
この方針は転換してほしいです。
まとめ
将棋フォーカスの講座は
難し過ぎるものが多いので、
もっと初心者向けの内容にするべき
というのが私の意見。
毎週10分しかない講座では
有段者向けの高度な内容を
きちんと扱うのは難しい一方、
初心者向けの内容であれば
効果的に扱えるからです。
また、もともと将棋が強い人には
有効な学習法がたくさんありますが、
初心者にとっては
将棋フォーカスの講座が
貴重な学ぶ機会だという
理由もあります。
向井葉月が新MCとなった時期は、
初心者向け講座をやるのに
最高のチャンスでした。
せめてこれからでも、
将棋フォーカスには
初心者向けの講座を
放送してもらいたいものです。
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