「ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティーを取り戻す」の感想

「ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティーを取り戻す」の書評・感想

「ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティーを取り戻す」という本を読みました。

ビジネスに限らず、これからの世の中でどう生きていくかを考えさせられる、深い内容の本でした。

私が特に大事だと感じたポイントは以下の3つです。

  1. 経済成長の役目は終わった
  2. 未来よりいまが大事、感情や幸福感が大事
  3. 自分自身が世の中の問題を引き起こしている

これらについて、「ビジネスの未来」の内容を紹介しつつ、私の感想や考えたことを書いていきます。

目次

「ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティーを取り戻す」の紹介

「ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティーを取り戻す」はこちらの本です↓

 

著者は多くの著書を発表されている山口周さん。私は山口周さんの本を読むのは初めてだったのですが、「とても頭が良い人なんだな」ということが伝わってきました。

この本はそもそもテーマが難しいうえに、出てくる言葉も難しいです。ふだんは目にすることのない漢字や、カタカナ言葉がたくさん登場します。

なので、この本を最後まで読めれば、それだけでレベルが高い人と言えるでしょう。ふだん読書をしない人が読んでもチンプンカンプンだと思うので、オススメしません。

 

本書の対象は、難しめの本を読むことに慣れていて、かつ「ビジネスや経済に対する哲学的な問いに興味がある人」です。これに当てはまらない人が読んでもおもしろくないでしょうから、注意しましょう。

では、私が注目した3つのポイントについて、順に見ていきます。

①経済成長の役目は終わった

1つ目のポイントは、「経済成長の役目は終わった」ということです。

 

現在の社会では、大きな変化が起きています。その変化を見るとき、「何が新しく始まるか?」を見るよりも「何が終わるか?」を見ると、変化の本質がわかりやすいです。

本書では、「経済成長とテクノロジーの力によって物質的貧困を社会からなくすというミッションが終わった」という主張がなされています。色々なデータを紹介して、その裏付けも紹介されています。そして、「もう経済成長をしても意味がないよね」と著者は言っているのです。

 

この主張は、私を含む多くの人を驚かせるものです。「あなたの仕事にはもはや意味がない」と言われている気分になるので、この本に書いてあることに反発したくなります。著者はそれを予想して、想定される質問に対する答えをたくさん盛り込んでいます。それでも、「筆者の主張にはここに穴がある」と指摘したくなる人は私も含めて多いでしょう。

でも、筆者が使う表面的な表現に反発するのではなく、伝えたいメッセージを真剣に受け止めることが大事だなと思いました。

 

今の世の中はすでに便利で快適なので、さらに便利で快適になることには、あまり価値が感じられません。そのことには同意できます。では、今後はどこを目指すべきなのかが問題なのです。それに対する本書の答えはこうです。

  • 「便利で快適な世界」を「生きるに値する世界」へと変えていく
  • 「経済性に根ざして動く社会」から「人間性に根ざして動く社会」への転換させる

これだけ読んでも、よくわからないですよね。だから、本書では長いページ数をかけて、哲学者の言葉などを紹介しつつ、どういう意味なのかを解説していきます。

 

ただ、長い解説が必要なせいで、その解説をじっと理解しながら聞く根気がないと、何も理解できません。「コイツは何を言いたいのかわからない」「くだらないアイデアだ」で終わってしまいます。

重要な問題であるがゆえに、一言で言いたいことを伝えることはできないのですが、そのせいで普通の人は議論のスタートラインにも立てずに脱落してしまうでしょう。

そのため社会でこの問題の議論が深まることはなく、よって社会が変わることもありません。せっかく頭の良い人が考えたことも広まらないので、もったいない気もします。

この対処法としては、後にも出てきますが「他人を変えるのではなくて、まず自分が変わる」しかないのでしょうね。

「経済合理性限界曲線」という考え方に納得

私は政治については、「自由経済こそが大事で、政府はなるべく何もしない方がいい」という立場でした。でも、本書で紹介されていた「経済合理性限界曲線」という考え方を知って、たしかに自由経済には限界があるかもしれないと思い直しました。

これは一言で言えば、「多くの人が困っていてコストをかけずに解決できる問題しか解決されない」ということです。図にするとこうです↓

経済合理性限界曲線

 

テクノロジーの発展の力を信じて未来に楽観的な人は、この曲線がどんどん外側に広がっていくと思っています。私もそうでした。とはいえ、広がりに限界があるのもたしかです。

「経済合理性限界曲線の外側にある問題は、市場原理に頼っていたら永久に解決されることはない」という著者の主張には納得しました。

 

そして、そうした問題を解決するには「人間性に根ざした衝動」に頼るしかないのだそうです。つまり、損得計算の結果ではない行動が、これからの社会では大事になってくると。

そして、損得計算計算なく行動できるようにするために、ベーシックインカムが必要だという話につながっていきます。私はベーシックインカムには賛成なのですが、こういう文脈で必要性を主張するという点が新鮮でした。

②未来よりいまが大事、感情や幸福感が大事

2つ目のポイントは、「未来よりいまが大事、感情や幸福感が大事」です。この感覚は、色々な問題とその解決策に結びついています。

 

著者は「未来のためにいまを犠牲にする」という考え方はおかしい、と主張しています。この主張には私は心から賛成ですし、私は過去にこんなブログ記事も書きました↓

 

著者が「いまが大事」だというのは、「経済成長が限界を迎えつつある」という現状認識と結びついています。「今日より明日はもっと良くなる」という確信が持てるのであれば、いまを犠牲にする理由もありますが、そうでなければ今日ガマンする意味がありません。

また、「未来のために、苦しいいまの仕事をがんばる」という労働感はもう古いのだそう。これからは労働そのものが報酬になる働き方になるということで、これにも共感しました。

 

少し前には「好きなことを仕事にする」と言うと、周囲のおじさんから「世の中そんなに甘くない」と言われる世の中でした。私は転職したり仕事を辞めたりしているのですが、同じようなことを言われました。でも、2021年のいまでは、「好きなことを仕事にする」のは、むしろ当然の選択として受け入れられてきている感じがします。

つまり、「嫌な仕事をガマンしてやるのはおかしい」という考えが、広まってきています。けっきょく、イヤイヤやった仕事では成果が出ないし、好きでやっている人には勝てないんですよね。

誰もが自分が心からやりたいと思える仕事ができる社会にしていきたいものです。

感受性に根ざして仕事を選ぶ

「辛く苦しいことをガマンすれば、その先に良いことがある」というのは、学校や社会からの洗脳です。そのせいで私たちは「いま、この瞬間の幸福」に関する感受性を失ってしまったと著者は主張しています。

この感受性を人が失うことは、いまの社会にとって都合がいいんです。なぜなら、自分の感情に素直な人は、つまらない仕事からすぐに逃げ出してしまうからです。それは社会にとっては困ります。だから、人が感受性を失うように仕向けるわけです。

 

でも、人の感情や幸福感こそ、他の何よりも優先して大切にするべきものです。だから、誰かがガマンしなければ維持できない社会というのが、そもそもおかしいと言えます。この問題の解決策について、引用します。

もし私たちが、自分の本来の感情、幸福感受性に根ざして仕事を選ぶことができれば、私たちの幸福に貢献しない仕事や活動は、社会から消えていくことになります。

なぜなら、私たちの社会には市場原理が働くからです。

ここに、私が「資本主義をハックする」と言っている意味があります。

 

市場原理を使って解決するというのが、とてもいいですね。無理やり人を動かさなくても、勝手に社会は良い方向に変わってきます。必要なのは、誰もが好きなことを仕事にできる環境を整えることだけです。

③自分自身が世の中の問題を引き起こしている

3つ目のポイントは、「自分自身が世の中の問題を引き起こしている」という意識です。これが、すべての改革案の根っことなる考え方だと、著者は述べています。

 

たしかに、「他の誰かが問題を引き起こしている」という考えでいると、「それを解決するのは他の誰か」ということになります。みんながそう思っていたら、誰も自分が解決しようとは思いません。

誰もが変えることができるのは「自分自身」なのですから、他の人に期待しているのではなく、まず自分が変わる必要があるのです。

 

「社会を変えるためには、社会のシステムを変えないといけない」というは、一見するともっともな意見に思えます。しかし著者は、システムが「主」で人間が「従」と考えること自体がおかしい、と主張します。

本当は、人間が変わらなければ、どんなシステムを導入したところで社会は変わりません。だから、私たち自身の思考や行動様式をどう変えるか、というのが本当に重要なことなのです。

 

「便利で快適な世界」ばかりを目指して「経済性に根ざして動く」ことをやめないといけません。「人間性に根ざして動い」て、「生きるに値する世界」を実現していく必要があるのです。

まず自分が変わり、資本主義をハックする

こうした変化は、これまでの価値観をまるごとひっくり返すようなことです。これを社会全体でいっぺんに推し進めるのはムリです。そのことは著者もよくわかっています。

だからこそ、「資本主義をハックする」という表現を使っています。社会を変えるのではなく、乗っ取ろうということですね。

 

この考え方だと、他の人を変えようとしないで済むのがいいです。私たち自身が変わることで、じわじわ乗っ取るという方法なので、「まず自分から」と思えます。

 

私自身、会社勤めがイヤで、2年ほど前から個人事業主として活動しています。そんな自分を肯定してくれる本だとも思いました。

ガマンすることは別に正しいことでも良いことでもなくて、自分の素直な感情に従うことこそ良いことなのです。そんな言葉は誰もかけてくれないけれど、みんな薄々とそのことに気づきはじめていると思います。

 

問題が自分の外側にあると思っている限り、自分を変えようとは思いません。他人や政治やマスコミを批判しても仕方がないなと、改めて思いました。

私は本書の主張には共感したので、自分にできることから始めます。まずは、会社を辞めた私自身が幸せになることが大事でしょう。色々なことを試して、心から好きだと言えることを仕事にしてがんばります。

まとめ

「ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティーを取り戻す」の主張には共感しました。

経済成長の役目は終わったので、誰もが好きな仕事を選べる社会を目指していかないといけません。

そのためには、自分自身が世の中の問題を引き起こしているという意識をもって、自分の行動を変えていくことが大切です。

昔に書いたこちらの記事も、よかったら読んでみてください↓

 

 

 

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