将棋で負けるとものすごく悔しいですよね。私自身、これまで10数年にわたって将棋をやってきて、1万回ぐらいは悔しい思いをしてきました。その中には、一生忘れられないような敗戦も何局かあります。
どうして将棋は、あれほどまでに負けると悔しいのか。それを改めて考えてみた結果、5つの理由が思い当たったのでまとめてみました。みなさんが思う理由と比べてみてください。以下の通りです。
②人のせいにできない
③運のせいにできない
④大逆転負けが多い
⑤勝負に時間がかかる
また、負けて悔しくてたまらないときは、他のことが手につかなくなるもの。そんなときの対策も紹介します。
理由①将棋では自分の負けを宣言する
まず最大の理由からいきます。それが「自分の負けを宣言する」ということです。これこそが、将棋に特有の理由です。他の4つの理由は、将棋以外にも色々なゲームやスポーツにあてはまるのですが、「自分の負けを宣言する」ことだけは、他の競技ではなかなかありません。
将棋では負けた側が「負けました」と投了することで決着します。反則などで投了することなしに決着することはたまにありますが、あくまでそれは例外。これが将棋の大きな特徴なのです。
スポーツであれば、「負けの宣言」で終わるのが当たり前のものは、ひとつも思い浮かびません。野球なら9回が終わったとき点が多い方が勝ち、サッカーやバスケなら試合時間が終わったとき点数が多い方が勝ち、テニスやバレーボールなら決められた点数を先に取った方が勝ちです。
いずれも、勝負が決まるときに敗者が自分の負けを宣言する必要はないのです。将棋以外のゲームでも、勝った側が勝利条件を満たせば、敗者がなにもしなくてもそこで終了となります。
将棋では「負けました」と言う必要があるので、悔しさが増幅されます。自分が負けたという事実を、自分で作らないといけない。勝者より一瞬早く、結果を受け止めないといけない。これは悔しいです。
理由②将棋は人のせいにできない
2つ目の理由は「人のせいにできない」ということ。将棋は一対一のゲームだから、仕方がありませんね。
野球やサッカーのような団体競技であれば、チームメンバーに責任をなすりつけることもできます。「アイツのミスがなければ」「ヤツが自分のアシストをうまくやっていれば」とか、口に出さなくてくても心で思うだけで、悔しさを軽減できることはあるでしょう。でも、将棋では人のせいにはできません。
理由③将棋は運のせいにできない
3つ目の理由は「運のせいにできない」ということ。将棋には運の要素がありません。補足すると先手と後手を決める振り駒は運ですが、運がからむのはそこだけです。
この点については、運の要素が強いゲームと比べるとわかりやすいです。麻雀やバックギャモンであれば、実力がなくても運さえあれば、世界一の選手に勝つ可能性があります。逆に負けたときには、「運が悪かっただけ。本当の実力は自分の方が上なんだ」と思うことができます。
でも、将棋だとそれはできないので、悔しさをかみしめるしかありません。
理由④将棋は大逆転負けが多い
4つ目の理由は「大逆転負けが多い」ということ。将棋は逆転が多いゲームです。
例えばサッカーやテニスであれば、1回のミスで失うのは1点だけです。5点のリードがあれば、それが1回のミスで逆転することはありません。でも、将棋ではそれに似た大逆転が起こります。ずっと有利を積み重ねてきた将棋が終盤の一手のミスで逆転する、ということはよくあるのです。
そういう大逆転で負けたときには、悔しさもひとしお。私も数え切れないほど見に覚えがあります。
理由⑤将棋は勝負に時間がかかる
最後の5つ目の理由は「勝負に時間がかかる」ということ。長い時間と労力をかけていればいるほど、負けたときの悔しさは大きくなりやすいです。
将棋の一局にかかる時間は場合によって色々ですが、1時間ぐらいはかかることが多いところ。時計を使わずに一手一手を考えながら指せば、もっとかかるでしょう。そうやって長くなると、悔しさが大きくなります。
これはたとえば、テレビゲームの格闘ゲームと比べるとわかりやすいです。格闘ゲームだと一回が数分で終わるので、負けても精神的ダメージが大きくなりません。しかもすぐさま次の対戦に移れるので、悔しさを引きずらずに済みます。将棋だとそうはいきません。
対策は「忘れましょう」
以上のような理由があるので、将棋で負けるとものすごく悔しいです。でも、悔しい思いをずっとひきずっていると、他のことが手につかなかったりするので困ります。私自身、悔しくてなかなか眠れなかった夜は数え切れません。なので、悔しい思いをしたときの対策をきちんと知っておいた方がいいです。
結論としては、「忘れる」というのが唯一の対策かなと思います。負けた対局のことを考えていると悔しい思いは消えないので、忘れるのがイチバンです。
そうは言っても、「そんな簡単に忘れられない」「忘れられないから困るんだ」という人は多いかと思います。
そんなときは、他のことを一生懸命やって気をまぎらわせるのが方法のひとつ。それでもダメなら、逆に負けた将棋を徹底的に検討しましょう。自分のミスや悪手をすべて洗い出してそれらに真剣に向き合い、そのうえで「二度と同じ失敗はしない」と心に誓えば、負けた勝負ではなくこれからの将棋に心が向いてきます。そうすれば忘れることができるでしょう。
どんなに悔しい思いをつのらせても、過去の結果は変えられません。反省すべきところを反省したら、さっさと忘れましょう。「スパッと忘れて次の勝負に向き合えるか」も実力の一部だと、私は考えています。