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将棋のタイトル戦での持ち時間の使い方、研究範囲はとにかく早指し

 
将棋のタイトル戦での早指し
この記事を書いている人 - WRITER -
梅澤 浩太郎
将棋講師。棋力はアマ四段。 インターネット上で将棋を教われるサイト、将棋マッチを開設・運営しています。 1987年12月生まれ。群馬県在住。 このブログでは自分でイラストを描きつつ情報発信中。叡王戦を支援しています。 将棋を始めたころからずっと、一番好きな棋士は藤井猛九段。 海外旅行が好きで旅行記も書いています。

将棋のタイトル戦での早指し

将棋のタイトル戦での
持ち時間の使い方は、
十数年前までから
大きく変わっています。

事前の研究範囲である
序盤では早指しをして、
時間を終盤までとっておくのが
現在の主流。

どうしてこうなったのか、
将棋界の世代交代を振り返りつつ
考えました。

現在対局中の竜王戦も序盤は早指し

この記事を書いている現在、
竜王戦の対局が進行中です。

広瀬章人竜王に豊島将之名人が挑戦する
竜王戦の第3局。

この対局では、
1日目の昼食休憩までで
57手も進みました

すでに戦いが始まっており、
もう中盤戦です。

 

最近のタイトル戦では
見慣れた光景とはいえ、
ポンポンと手が進んでいくことに
驚きます。

この竜王戦の対局の場合、
対局開始から1日目の昼食休憩までは
たったの3時間半。

持ち時間が両者8時間の竜王戦であれば
二人合わせて持ち時間は16時間もあるので、
3時間半であればそのうちの
約2割でしかありません。

57手というのは
一局の将棋の平均的な手数の
ちょうど半分ほど

このペースで指し手を進めれば
1日目の午後5時には
将棋が終わってしまうわけで、
そう考えるといかにスピードが早いか
というのがわかります。

ニコニコ生放送の
コメントを見ていても
「1日目で終わりそう」
という声がたくさんありました。

 

実際には
難しい局面で持ち時間を
まとめて消費することになるため、
終局の時刻が極端に早くなることは
あまりありません。

それでも
タイトル戦という大舞台での
長い持ち時間での対局にも関わらず
ポンポンと指し手が進んでいくのを見るのは、
本当に時間を使わなくて大丈夫なのか
と怖い感じがします。

序盤からじっくり時間を使った羽生世代

この竜王戦の対局に限らず、
タイトル戦や他の通常の対局でも
序盤で持ち時間を使わずに
飛ばしていくというパターンが
ここ数年はとても多くなっています。

こうした時間の使い方は
昔からあたりまえだったわけでなく、
むしろ十数年前までは
序盤にたっぷり時間を使うものでした

羽生善治、佐藤康光、森内俊之といった
羽生世代の面々が
タイトルをほぼ独占していたころの話です。

 

2日制のタイトル戦であれば
1日目は本格的な戦いが
起こらない方が普通。

特に羽生さんと森内さんが
名人戦で戦ったときなどは、
2日目の夕方からようやく戦いが始まる
といったことも珍しくありませんでした。

今の感覚からすると、
ものすごいスローペースですね。

序盤を飛ばす考えを持ち込んだ渡辺明

そんな当時の将棋界の時間の使い方に
革命をもたらしたのが渡辺明です。

渡辺さんが活躍した棋戦といえば竜王戦で、
竜王9連覇という
すごい記録を持っています。

渡辺さんは「序盤からじっくり」
があたりまえだった将棋界に
序盤に時間を使わずにどんどん指し進める
というスタイルを導入しました。

これによって
序盤からたっぷり持ち時間を使う
羽生世代の棋士たちに対して、
終盤の残り時間の面で
優位に立つことができたのです。

 

このころの渡辺さんは、
事前の研究で用意しておいた
とっておきの一手を封じ手にして
一気にリードを奪う
といったこともありました。

こうしたことがなぜできたかと言えば、
いくら序盤は早指しとはいっても
1日目は研究できる範囲までしか進行しない
ということが多かったからです。

渡辺さんも序盤はどんどん指すとはいえ、
封じ手のことを考えて
研究範囲でも時間を使っていました。

現在では早指しの程度がすさまじいため、
序盤の研究範囲は
1日目の早い段階で通り過ぎてしまう場合が
ほとんどです。

序盤早指しの代表格の豊島将之

現在の将棋界では
序盤の研究はより深くなっており、
時間はさらに使われなくなっています。

持ち時間について
徹底的に合理的に考えられるようになって、
「研究範囲で持ち時間を使うのはムダ」
という感じになっているのです。

序盤で時間を使わなければ、
終盤に時間をとっておくことができます。

将棋の勝敗を大きく左右するのは、
いかに終盤でミスをしないかということ。

時間がたっぷりあれば
ミスをすることが少なくなり、
その結果として勝ちやすいというのは
たしかです。

実際、
序盤の早指しが有効であることは
タイトル奪取などの結果として
現れています。

その代表的な例が
豊島名人です。

 

豊島さんは
研究範囲で時間を使わないことを徹底し、
棋聖、王位、名人と一気にタイトルを獲得。

勝っている人のマネをするのが
将棋の世界ですから、
豊島名人の活躍によって
「序盤は早指しで飛ばす」
という流れは加速しました。

豊島名人が早指しであるため、
対戦相手としては
自分だけ序盤から時間を使うと
残り時間の面で不利になってしまいます。

それを避けるためには、
豊島名人に合わせて
序盤は飛ばしていくしかありません。

こうして、
将棋界の早指しの流れは
どんどん強まっています。

序盤で時間を使う将棋も見たい

研究範囲で時間を使わないというのは、
合理的に考えれば
当然のことなのかもしれません。

とはいえ私としては、
序盤からたっぷり時間を使っていたころが
懐かしいですし、
そうした将棋も見たいという思いがあります。

たとえ研究済みの局面であっても
真剣勝負の場で改めて考え直すことで
その読みが自分に蓄えられて実力になる、
とかつては考えられていました。

そういう考え方は、
「序盤に時間を使えば本当に将棋が強くなるのか」
「そんなことより目の前の一局に勝つのが大事」
と言われると反論のしようがなく、
合理的ではないと言われても
仕方がありません。

 

それでも序盤から時間を使う棋士の姿を
私が好きなのは、
「盤上の真理を探求している」
という高い志があるように
感じるからです。

もちろん棋士がタイトル戦で
早指しをするからには、
それまでに研究を積み重ねた努力が
背景にあることは知っています。

ただ、現実の対局姿として見えるのは
パパっと指していくところなので、
一手一手の重みが感じにくいのです。

それよりは、何十分も考えて
じっと端歩を突くような手を見る方が
プロらしい深い思考をめぐらしていることが
観ている側としてはわかりやすいため、
その一手にすごみを感じるわけです。

観戦する側が一方的に持つ
印象にすぎないことはわかりつつも、
「序盤のなにげない手に時間を使う」
ことにはロマンがあるのです。

序盤から時間を使う藤井聡太に注目

若い世代で序盤から持ち時間を
たっぷり使う棋士と言えば
佐藤天彦九段や斉藤慎太郎七段が
思い浮かぶのですが、
いずれもタイトルを失ってしまいました。

負けた将棋を見ると
やはり序盤で時間を使ったぶん
終盤で時間がなくなり、
ミスが多くなってしまった

という印象があります。

序盤で時間をたっぷり使うというのは
時代遅れの戦い方なのでしょうか。

 

いま注目しているのは
藤井聡太七段の存在です。

藤井七段は早指しの場合もありますが、
序盤から納得いくまで時間を使う対局も
多いです。

タイプとしては
羽生さんや佐藤天彦さんに
近いように感じられます。

藤井七段は近い将来、
タイトル戦に登場することは
まず間違いないでしょう。

もし序盤で時間を使うスタイルのまま
タイトル戦で活躍すれば、
序盤で時間を使うことを良しとする流れ
が再びくるかもしれません。

繰り返しになりますが、
棋士は勝っている人のマネをする
ものだからです。

序盤から時間を使うスタイルが
復活しないかなと期待しながら、
私はタイトル戦を観戦しています。

まとめ

最近の将棋のタイトル戦では、
序盤の研究範囲では時間を使わず
早指しをするのが
当たり前になっています。

豊島名人はそのスタイルで
結果を出しており、
他の棋士もそのマネをすることで
序盤はどんどん指すという流れは
強まるばかり。

序盤の一手一手に時間をかける
棋士の姿を見るのが好きなので、
どこかで早指しの流れが変わらないかに
私は注目しています。

 

 

 

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