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高見泰地叡王が叡王戦で4連敗、悪い流れになった要因4つ

 
高見泰地叡王が叡王戦で4連敗
この記事を書いている人 - WRITER -
梅澤 浩太郎
将棋講師。棋力はアマ四段。 インターネット上で将棋を教われるサイト、将棋マッチを開設・運営しています。 1987年12月生まれ。群馬県在住。 このブログでは自分でイラストを描きつつ情報発信中。叡王戦を支援しています。 将棋を始めたころからずっと、一番好きな棋士は藤井猛九段。 海外旅行が好きで旅行記も書いています。

高見泰地叡王が叡王戦で4連敗

叡王戦七番勝負は
高見泰地叡王の4連敗で
決着しました。

高見叡王は本来は
形勢が悪くなっても粘って逆転するのが
得意な棋士。

相手が永瀬拓矢七段という
強敵だったとはいえ、
ここまであっさりと負けてしまったのは
不思議な感じがします。

高見叡王が一方的に負けたのは、
悪い流れになってしまったから
ではないでしょうか。

そこで、
悪い流れになった要因を
4つ考えました。

この4つの要因がからみ合って
高見叡王の将棋に影響したのでは
というのが私の考えです。

要因①応援してくれる人を思う心

まず第1の要因は、
「応援してくれる人を思う心」
です。

 

七番勝負が決着した第四局。

投了直後から
高見叡王はとても落ち込んだ様子。

そのまま大盤解説会に
姿を見せた際にも
暗く沈んだ様子で、
ついには耐えきれなくなって
涙を流していました

そのときの高見叡王の言動を
生中継で見ていましたが、
高見叡王が泣いていたのは
自分のためではなく、
応援してくれた人のことを
思ってのことだと
感じられました。

自分を応援してくれるファンの人のために
将棋を指したい
ということを
以前からインタビューなどで
語っいた高見叡王。

第4局の後の高見叡王の様子は、
自分がタイトルを失って悲しいという
感じではありませんでした。

 

永瀬七段が強いことは
十分にわかっていたわけで、
負ける自体の覚悟は
できていたはずです。

自分のことではなくて
ファンに申し訳ないという
思いが強くて、
そのせいで暗く沈みこみ、
涙もあふれてきたのでしょう。

 

「応援してくれる人のために戦う」
という気持ちは、
基本的には力になります。

ただ、場合によってはその気持ちは
「応援してくれる人を
がっかりさせてはいけない」

というプレッシャーになり、
本来持っている力を発揮できない
要因となることがあります。

他の3つの要因と
組み合わさることによって、
今回の叡王戦七番勝負に限っては、
「応援してくれる人を思う心」は
悪い流れを作る要因となったと
私は考えます。

要因②第1局の逆転負け

第2の要因は
「第1局の逆転負け」
です。

 

振り返ると、
この叡王戦の第2局、第3局、第4局では、
高見叡王が勝ちそうな局面は
ありませんでした。

なので、
高見叡王が勝つとすれば
第1局がほぼ唯一のチャンス
だったのです。

そして、
もし第1局を勝つことができていれば、
勝負の流れは
まったく違ったものに
なっていたはず
です。

 

第1局では
高見叡王が中盤から
ペースをつかみました。

鋭く踏み込んで差を広げ、
一時は勝利目前という
局面にまでもっていきました。

しかし、
安全に勝とうと
着実な一手を選んだつもりが、
そのせいで逆転。

以降は永瀬七段の
手堅い指し回しの前に
手も足も出なくなって
負けとなったのです。

 

七番勝負が始まる前までで、
高見叡王と永瀬七段の
公式戦の戦績は
高見叡王の0勝3敗

一度も勝っていないのです。

高見叡王と永瀬七段は
以前からの研究会仲間ということで、
練習対局も
多く指しているようです。

高見叡王のインタビューへの
受け答えを聞いていると、
その練習対局でも
永瀬七段の方が勝率がいいのだろうと
想像されます。

公式戦で勝利したことがなければ、
永瀬七段の強さの底が見えず
そのことによる不安もあったはず。

 

それがもし第1局で勝っていれば、
一気に視界が開けたでしょう。

これまでの3局を負けていたとしても、
それは過去の話であって
今なら永瀬七段に負けない
という心境になれたかも。

第1局を負けしたことで、
過去の対戦のイメージを一新するチャンスを
逃してしまいました。

 

しかも終盤での逆転だというのも
精神的なダメージが大きいです。

有利な状況で終盤に持ち込んでも
勝てない
となると、
一体どうすれば勝てるのか
見えない状態になります。

 

こうした影響があるので、
「第1局の逆転負け」は
流れが悪くなる
大きな要因になるのです。

要因③七番勝負の対局日程

第3の要因は、
「七番勝負の対局日程」
です。

応援してくれる人への思いと
第1局を負けたことが合わさって、
対局日程が高見叡王にとって
悪いものとなってしまったのです。

 

今回の叡王戦の対局は、
すべて土曜日に
設定されていました。

日程と各対局の間隔は
以下の通りです。

4月6日:第1局
(1週間)
4月13日:第2局
(3週間、ゴールデンウィーク含む)
5月4日:第3局
(1週間)
5月11日:第4局
(2週間)
5月25日:第5局と第6局
(1週間)
6月1日:第7局

 

まず第1局の後、
1週間後に第2局があったせいで、
高見叡王に立て直す時間が
ありませんでした

第1局の逆転負けの流れを
引きずったまま、
第2局も負けてしまった印象。

 

続く第3局までは、
今度は3週間という
長い時間がありました。

連敗をしたところから
流れを変えるチャンスでも
あったのですが、
高見叡王には
都合良く働かなかったようです。

というのも、
この3週間の間には、
ゴールデンウィークの連休
がありました。

高見叡王はタイトルホルダーとして
ニコニコ超会議や
岡崎将棋祭り
などに出演。

こうしたイベントで忙しくて、
高見叡王は休む時間が
あまり取れませんでした。

連休終盤に行われた第3局の
対局前に行われたインタビューでは、
高見叡王はそのことを正直に語っており、
その様子からして疲れていそう。

気迫を前面に押し出して
対局に向かうタイプの永瀬七段に
対抗するためには、
体力とガッツが必要です。

連休中の仕事の疲れが
残っている状態
では、
対局も厳しくなります。

 

また、イベントで
ファンと触れ合うことで、
ネガティブなことを考えてしまう
という影響もあったと思われます。

前述のように
「応援してくれる人を思う心」
を持つ高見叡王。

高見叡王にはファンが多いので、
連休中のイベントでも
ファンからの応援や激励の言葉を
たくさん受けたでしょう。

そのたびに、
高見叡王としては
2連敗してしまっている
自分の不甲斐なさを思ったはずです。

また、
「このまま一度も勝てなかったらどうしよう」
などといったことも
色々考えたでしょう。

第2局までのことを忘れて
切り替えるのに使えたはずの3週間が、
逆に開幕からの2連敗のことばかり
思い返す期間になってしまった

と予想されます。

 

疲れが残ったまま迎えた
第3局に敗れると、
またわずか1週間の間隔で第4局。

第1局と第2局の間と同様、
立て直す時間がありません。

永瀬七段の勢いに飲まれて
第4局にも負けてしまいました。

 

このように、
各対局の間隔の長さは
高見叡王には良くない方向に
働いたと考えられます。

もし第1局に勝っていれば、
こうした流れは
まったく違ったものに
なっていたはずです。

初戦の勝利があれば
その勢いのまま、
第2局に望むことができました。

また、2連勝または1勝1敗の状態で
ゴールデンウィークに入れば、
精神状態もまったく違いますし、
ファンからの応援や激励は
大きな力になった
でしょう。

そうして応援する人達から力を得て
第3局にのぞむという流れであれば、
そこでの勝利も期待できます。

 

ただ、
実際はそういう流れとは
まったく逆のものと
なってしまいました。

要因④第5局につなげたいという思い

第4の要因は、
「第5局につなげたいという思い」
です。

これは特に、
第3局と第4局に
大きく影響したと思われます。

 

昨年と同様、
今年の叡王戦も
持ち時間が1時間の対局が
行われませんでした。

叡王戦では、
第1局から第6局まで、
持ち時間が2局ごとに
変わっていく仕組み
です。

どういう順番で
どの持ち時間の対局を行うかは、
対局者が決めます。

去年も今年も
同じ順番が選択され、
以下のように決まっていました。

第1局と第2局:5時間
第3局と第4局:3時間
第5局と第6局:1時間

 

この中でも、
最も特徴があるのが
持ち時間が1時間の対局です。

まず、タイトル戦なのに
持ち時間が1時間しかないというのが
異例なこと。

そのうえ驚きなのが
1日に2局を行うのです。

そんなタイトル戦は
今までになかったので、
見るのを楽しみにしていた
将棋ファンが多い
ところでした。

それを高見叡王も
わかっていたからこそ、
なんとか1勝して
第5局につなげたいという
思いがあったのでしょう。

 

そのうえ、
第5局と第6局では
現地大盤解説を金井恒太六段
担当することが決まっていました。

高見叡王にとっては、
金井六段は
前期叡王戦を戦った
特別な棋士。

第4局の対局前のインタビューでも
この金井六段の大盤解説について
言及した
ほどです。

しかも、金井六段と共に
郷田真隆九段も
大盤解説をする予定でした。

金井六段は郷田九段のことを
尊敬しており、
特別に思っているということは
よく知られています。

そのお二人のコンビで
大盤解説をするという機会は
初めてのことで、
金井六段にとっても特別な場に
なるはずでした。

高見叡王としては、
自分が勝って金井六段に
その場を用意してあげたい

という思いがあったのです。

また、第5局が行われないとなれば、
対局場となる甲府の「常磐ホテル」
の準備が無駄になり、
現地に行く予定を立てている
将棋ファンの計画もなくなります。

 

こういったことを
考えたであろう高見叡王。

「第5局につなげたいという思い」が
大きなプレッシャーとなって
対局中の心理状態にも影響したと、
私は考えています。

まとめ

高見叡王が4連敗で
タイトルを失冠する結果となった
叡王戦七番勝負。

高見叡王にとって
悪い流れとなってしまった要因は
以下の4つだと私は考えます。

要因①応援してくれる人を思う心
要因②第1局の逆転負け
要因③七番勝負の対局日程
要因④第5局につなげたいという思い

 

これらの要因は
それぞれ独立したものではなく、
お互いにからみ合っています。

それが結果的に
高見叡王にとって
悪い方へ悪い方へと
働いてしまったようです。

高見叡王は
ファンを大切にしていて、
とても素晴らしい棋士です。

まだまだ若いので、
これからチャンスはたくさんあるはず。

今後の活躍に注目しています。

 

 

叡王戦の各対局については
こちらの記事をどうぞ↓

 

叡王戦の記事は
こちらにまとめてあります↓

 

 

 

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