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「棋士の一分 将棋界が変わるには」橋本崇載著の感想~組織への絶望~

 
「棋士の一分」の感想
この記事を書いている人 - WRITER -
梅澤 浩太郎
将棋講師。棋力はアマ四段。 インターネット上で将棋を教われるサイト、将棋マッチを開設・運営しています。 1987年12月生まれ。群馬県在住。 このブログでは自分でイラストを描きつつ情報発信中。叡王戦を支援しています。 将棋を始めたころからずっと、一番好きな棋士は藤井猛九段。 海外旅行が好きで旅行記も書いています。

「棋士の一分」の感想

橋本崇載八段の著書
「棋士の一分 将棋界が変わるには」
を読んだので感想をまとめました。

将棋界の現状をなげく橋本八段が
表に出てこない実情を暴露し、
持論を展開する問題作。

その根底にあるのが
将棋連盟という
自らが属する組織への絶望。

過去に新卒で入った会社を辞めた私は
共感できました。

「スマホ不正疑惑」に関しても
橋本八段の見解が語られており、
興味深かったです。

「棋士の一分 将棋界が変わるには」とは

「棋士の一分 将棋界が変わるには」は
こちらの本です↓

 

この本にどんなことが書いてあるのか、
各章のタイトルを読むだけでも、
この本の雰囲気は伝わると思います。

序章:スマホ不正疑惑
第1章:コンピュータ将棋とカネ
第2章:棋士のモラルとカンニング
第3章:崩れゆく将棋界
第4章:斜陽産業の現実
第5章:棋士の一生
終章:危機に向き合う

 

棋士が新書の本を出すことは
珍しくないのですが、
自己啓発本のような
内容であることがほとんど。

本書のように
将棋連盟を批判する内容の本は
他に見たことがありません。

その意味で
本書は問題作であり、
同時に貴重な存在とも言えます。

出版は2016年12月なので、
約3年前。

当時はいわゆる「スマホ不正疑惑」
起きており、
将棋界は混乱の中にありました。

あまりにぴったりのタイミングのため
誤解されやすいのですが、
本書はその騒動があったから
書かれたというわけではないようです。

橋本八段がもともと将棋界の現状に対して
警告しようとしていたところ、
想定していた最悪の事態である
この問題が起こってしまったようです。

「スマホ不正疑惑」への言及

私が本書の中でも最も興味を引かれたのは
やはり「スマホ不正疑惑」についてです。

この問題を知らない人のために
簡単に説明します。

2016年、
三浦弘行九段が対局中にスマートフォンを使って
将棋ソフトの手をカンニングしたのではないか、
という疑いがかけられました。

そのとき三浦九段は
竜王戦の挑戦者に決定していましたが、
そのトーナメントでの対局で
不正があったとされました。

三浦九段は疑惑を否定したものの、
将棋連盟は12月末までの出場資格停止と
という処分を行い、
竜王戦の挑戦者も変更。

しかしその後、
第三者委員会の調査によって
不正行為の証拠は何もないことが明らかに。

将棋連盟は三浦九段に謝罪し、
2017年に両者の和解が成立したのです。

 

私は群馬県出身。

三浦九段は藤井猛九段と並ぶ
群馬県出身棋士の代表格であり、
応援しています。

そのため「スマホ不正疑惑」での
将棋連盟の対応には
もともと怒りがありました

なぜまともな証拠もない状態で
将棋連盟は処分を行い、
竜王戦のタイトル挑戦という
とてつもなく貴重な機会を奪ったのかと。

本書は「将棋連盟を批判する」という
スタンスで一貫しているため、
私としてはスッとしました。

 

実は橋本八段自身も
三浦九段の不正を疑い処分を求めたと
報道されていたのですが、
これについては
「まったくの事実無根である」
と否定しています。

「スマホ不正疑惑」に関しては、
ほぼすべての関係者が
自分の都合の悪いことに関しては
「私はそんなことはしていない」
と否定している
印象です。

誰に責任があるのかは
今もよくわからないまま。

ただ、こうした事件があったことは、
二度と同じようなことを繰り返さないために
忘れてはいけないと思います。

将棋連盟を棋士だけで運営するのは無理

本書の中で最も共感した主張は、
将棋連盟を棋士だけて運営することには無理がある
というものです。

「スマホ不正疑惑」にも関連している
この問題。

本書から引用します。

マネジメントやIT部門など
各分野のスペシャリストを外部から招聘して、
それぞれの分野を任せることは絶対に不可欠である。
(中略)
スペシャリストを起用することもなく、
谷川会長や他の理事たちが、
おおよそすべてのビジネスの舵取りを
していこうとするのは無理である。
今回の騒動でも、
いの一番に弁護士を入れた調査委員会を立ち上げていれば、
状況は変わっていたかもしれない。
時代錯誤としかいいようがなく、
このままでは破綻してくことは目に見えている。

 

将棋連盟は棋士自らの手で
運営されている
ことに特徴があり、
それが伝統となっています。

ただ、現在においては
そのやり方には無理があると
橋本八段は主張しているわけで、
私も賛成です。

この点については
「スマホ不正疑惑」の際にも
将棋界の内外から多くの指摘がありましたが、
ほぼ何も変わっていません。

こうした
「誰も何も言わないし、行動しない」
という棋士たちの態度を
改めないといけないというのが、
橋本八段の主張なのです。

自分が属する組織を変えられない悩み

橋本八段がさんざん批判しつつ
自らも所属しているのが
日本将棋連盟という組織。

「組織を変えたいけれど、
自分には何もできない」

というのが橋本八段の苦しみです。

私もその思いは共感できます。

 

私は新卒で大企業のメーカーに
就職しましたが、
そこでは理不尽なことが多くありました。

今ではほとんど意味がないと
思えるような作業や習慣でも、
「昔からこうだから」
という理由だけでやり続けていることが
たくさんある状態だったのです。

しかし、
その問題にみんなうすうす気付いていながら、
誰も現状を変えようとしないことに
私は絶望しました。

それを上司に指摘しても
「君は言われたことを
しっかりやっていればいいんだ」
とまったく取り合ってもらえず。

その会社の人は
とにかく「安定」が大好きで、
現状を変えるようなことは
基本的にしたくなかったのです。

そうした会社の性質は
心理テストの結果としても現れていたので、
興味のある方はこちらの記事をどうぞ↓

 

私はそんな会社の気風に
どうしてもなじめず、
3年で退職して転職しました。

私の場合には、
自分の属している組織を離れる
ことができたわけです。

ですが、
橋本八段の場合はどうでしょうか。

プロ棋士の公式戦は
将棋連盟が独占しており、
そこを離れてプロ棋士として
活動することはできません。

橋本八段がいくら将棋連盟のことを
気に入らないとしても、
公式戦で対局するためには
将棋連盟を離れることはできないのです。

そのため、
橋本八段が抱えている絶望は
かつての私の場合よりも
はるかに深刻でしょう。

 

橋本八段は批判をするだけでなく、
2015年には将棋連盟の
常務理事に立候補するなど、
将棋連盟を変えるために
行動を起こしています。

しかし、このときには
プロ棋士や引退棋士、一部の女流棋士が
投票する選挙で惜しくも落選

当時はストレスで心療内科に通っており、
自立神経失調症によるめまいが
対局に影響することもあったと
本書の中で明かしています。

橋本八段が
そんな状態になっていたとは
私はまったく知らず、
驚きました。

3年経っても変わらないままの将棋連盟

本書では橋本八段が
言いたい放題に語っているので、
読んでいて不快に思う人も多いでしょう。

でも橋本八段は批判するだけではなく、
かなり思い悩んで考えて
問題解決のために行動しています。

そのことがわかったので、
私は応援したくなりました。

 

本書が出版されて
3年ほど経ちましたが、
ここで指摘されている
将棋連盟の問題点は何も変わらず、
そのまま残っています

「スマホ不正疑惑」のような
大きな問題がまた起こるまでは
誰も何も言わず、
行動もしないのでしょう。

その方が楽ですしね。

将棋連盟に限らず、
長年続いてきた大きな組織には
ありがちなことだと思います。

 

組織の問題に向き合った一冊。

自分が属する組織に不満のある人が
本書を読めば、
何か行動のヒントが得られるかもしれません。

まとめ

橋本崇載八段の著書
「棋士の一分 将棋界が変わるには」。

将棋連盟が抱える問題と
その対策案が示されています。

「スマホ不正疑惑」の裏側など、
興味深い内容が多かったです。

「現状のままではマズイとわかっているのに
何も変えようとしない組織」
に対する絶望が本書にはあふれており、
私は共感できました。

組織の中で今まさに困っている人が読めば、
対処方法を考えるきかっけになります。

 

 

橋本八段に関連して
こちらの記事も合わせてどうぞ↓

 

 

 

 

 

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